台湾の左官、金沢で初研修 日本統治時代の建物保全、養成急務

台湾で瓦ぶきの技術を解説する金沢職人大学校の講師(手前の2人)=2019年6月、台中市(金沢市提供)

  ●2月から3年計画 職人大学校が受け入れ

 台湾の左官職人が2月、金沢で初の技術研修に臨む。台湾では日本統治時代(1895~1945年)の歴史的建造物を文化や芸術施設などに利活用する動きが広がっているが、日本の伝統的な建築技術を持った人材が不足し、養成が急務となっている。そのため、金沢市が海外研修生として、金沢職人大学校で3年計画で受け入れて技術を高めてもらう。観光スポットとしても人気が集まる近代遺産の保全に金沢の技が一役買う。

 金沢市によると、海外研修生として受け入れるのは、国立台北芸術大文化資源学院の推薦を受ける台湾の左官職人2人。ともに日本語での日常会話に不自由せず、1年目の今年は2月下旬から3月下旬までの計10日間程度を想定している。

 今回の研修生の受け入れは、台湾と職人大学校の技術者による草の根交流が礎となった。

 台湾からの視察のほか、2014年12月には大学校の講師が旧台湾総督府鉄道部庁舎で漆喰天井の修復を指導。19年6月には、日本の瓦ぶきの技術を伝えるために、大学校講師や専門員を派遣した。その受講者の中には金沢への留学を希望する人もいたという。

 金沢で技術を学びたいという声を受け、高度な職人技のノウハウを持つ金沢職人大学校に育成の場として白羽の矢が立った。国立台北芸術大文化資源学院の副教授から、数々の日本統治期の建造物修復に携わった金沢職人大学校講師の木村勉氏(長岡造形大名誉教授)を通じて、大学校に研修生受け入れが打診された。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、計画は一時ストップしたものの、コロナの5類移行など状況が落ち着いたことから派遣研修が実現した。

 大学校には文化財建築の保全を担う国内の関係者らの視察、研修が相次でいる。今回初めて海外からの研修生を受け入れることで、市歴史都市推進課の担当者は「伝統的で高度な職人技の伝承に向け、国外の人材育成にも貢献していきたい」と話した。

 ★台湾の歴史的建築物 台湾には日本の指定文化財と国登録文化財に相当する建築物が合わせて約2700件あり、そのうち約4割が日本統治時代の建物という。近年、総統(大統領)官邸である総統府の赤レンガの建物に代表される歴史的な建築物を見直し、活用する取り組みが盛んになってきている。約100年前の建物が博物館やデパート、カフェなどにリノベーションされ、人気スポットにもなるなど利活用の動きは広がっている一方、日本の伝統的な修復技術を持った職人は少ない。

金沢職人大学校の講師が修復を指導した旧台湾総督府鉄道部庁舎(木村氏提供)

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