アンドレザ・ジャイアントパンダにインタビュー!
国内外のスターや監督のインタビューが日々、掲載されている当サイトだが、パンダへの取材記事は初めてだろう。それも体長3メートルの巨大パンダ。
今回、インタビューしたのは往年の名レスラー「アンドレ・ザ・ジャイアント」ばりのリングネームを持つ、アンドレザ・ジャイアントパンダである。彼は北海道のローカルプロレス団体<新根室プロレス>の所属選手だ。新根室プロレスは、その名の通り北海道根室市が拠点。アンドレザの人気もあって全国的に知られるようになった。
躍進の立役者は故・サムソン宮本会長。根室で玩具店を営みながら地元のプロレス好きを集めて団体を旗揚げし、抜群のアイディアと実行力で東京での大会も実現させた。アンドレザはDDTなどさまざまな団体にゲスト参戦してもいる。
そんな新根室プロレスがドキュメンタリー映画になった。タイトルは『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語』である。
「新根室プロレスのメンバーはみんな優しくて大好き」
「無理しない ケガしない 明日も仕事!」は新根室プロレスのスローガン。地元の有志が集った“アマチュアプロレス”団体だから、みんな仕事がある。ゆえに無理しちゃいけないしケガもできない。危険なことはやらない分、コミカルでキャラクター性の強い選手たちが観客を魅了してきた。その中で登場したのがアンドレザなのだ。
中国は四川省の森の中で死にかけていたところを保護されたというアンドレザ。サムソン宮本会長に引き取られ、レスラーに成長した。
アンドレザはいじめられっ子だったんです。だから最初は「人間は優しいんだよ」ということを、みんなで教えましたね。人間の食べ物も与えたりして、距離を縮めました。そのうちすっかり根室になじみましてね。好物は花咲蟹。殻をむくのも得意です
そう解説してくれたのは、新根室プロレスの本部長を務めるオッサンタイガー。サムソン宮本会長の弟だ。リング上で声を発することはないアンドレザだが、今回はオッサンタイガーの通訳でインタビューが実現した。
新根室プロレスのメンバーはみんな優しくて大好きです。自分を救ってくれた大切な仲間たちですね。
そう語るアンドレザ。映画でも描写されているが、新根室プロレスのメンバーは挫折を経験したり、どこか人生にはぐれたようなところがある面々が多い。
地方でくすぶって、しかもプロレスが趣味となると仲間もできにくい。「新根室プロレスのメンバーはみんな陰キャなんです」とオッサンタイガー。そんな面々をリングに上げて輝かせたのがサムソン宮本会長だった。
しかし会長の病気により、団体はいったん解散に。映画の中では会長の闘病生活と死も映し出される。大黒柱を失った新根室プロレスは、いかに再起したのか。サムソン宮本会長は、団体のメンバーに何を残したのか。“はぐれもの”たちだからこそ、彼らの奮闘はダイレクトに心に響く。
「アンドレザ、けっこう美声なんですよ」
アンドレザの生い立ちにも、デカくて可愛いだけでないドラマがある。
プロレスラーとして活動してきた中で印象に残っているのは、東京での大会でみんなで貸切バスで移動したこと。修学旅行みたいで楽しかった。(アンドレザ)
プロレスでつながった仲間たちとの生活そのものに意味があるのだ。 ちなみに今のアンドレザの趣味はTikTok。スリックウォーク(スリックバック)の練習をしているという。体長3メートルのパンダがリングで空中歩きを披露したら、さらなるブレイク間違いなし。
そこからが新根室プロレスとアンドレザの第2章ですね。
オッサンタイガーの目標は「サムソン宮本会長が辿り着けなかった領域まで行く」ことだという。アンドレザの芸能活動も、求められればやっていきたいそう。
たとえば歌手デビューとか。アンドレザ、けっこう美声なんですよ。カラオケ? それは行かないですね。部屋に入れないので。
団体の新たな可能性を追求し、活動を拡大することが会長への恩返しになるとオッサンタイガー。本作は“プロレス映画”というより、新根室プロレスに関わる人間たちの人生模様そのものがテーマと言っていい。 アンドレザは、映画の魅力についてこう語ってくれた。
底辺でくすぶってる人、くすぶってるパンダにぜひ見てほしいです。この映画には人生、パンダ生のヒントが詰まってますから。
先日、地元・根室で開催された映画完成披露上映会は大成功。次はパンダ試写会もアリではないか。上野あたりで。
取材・文:橋本宗洋
『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語』は2024年1月2日(火)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開