女子旅で人気!日本で唯一の寝台列車「サンライズ瀬戸・出雲」魅力は個室の空間 連日満席も…登場から26年 未来はあるのか?

東京と四国、山陰地方を結ぶ、個室の寝台特急列車「サンライズ瀬戸・出雲」がここ数年、女子旅で人気です。週末を中心に予約でいっぱいになり、年末年始も連日満席となっています。

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魅力は、何と言っても、鍵のかかる個室でセキュリティーが万全なこと。住宅メーカーと一緒に設計したという木目調の車内は清潔感にあふれています。

「サンライズ瀬戸・出雲」は、毎日走る定期の寝台列車、夜行列車としては日本で唯一の存在です。人気にも関わらず、なぜ“唯一の存在”なのでしょうか。「寝台列車」の歴史を振り返ると、そこに答えがありました。

デビューは26年前「ブルートレイン」から「新型電車」に

「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」は、それまで走っていた青い車体のブルートレイン「瀬戸」と「出雲」の“客車”を“新型電車”に置き換え、2つの列車を連結する形で1998年7月にデビューしました。 「瀬戸」はこの時に廃止され、「出雲」は2往復から1往復に減っています。その後も残ったもう1往復の「出雲」は2006年3月まで、ブルートレインでの運行が続きました。

ブルートレイン「出雲」が廃止される3か月前の2005年12月、東京駅で撮影した写真を見ると、東海道線10番ホームで寝台特急「出雲」が21時10分の発車を待っています。反対側9番線の電光表示板を見ると次の列車は22時00分発の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」、その次は23時00分発の寝台急行「銀河」となっています。

わずか18年前の様子ですが、上野東京ラインが開通し、途中駅として数分おきに電車が発着する現在の9番・10番ホームの姿とは、隔世の感があります。

当時のブルートレイン 車内は「ゆったり」ぜいたくな空間

当時の寝台特急「出雲」の車内をのぞいてみましょう。基本は8両編成で先頭の1号車がA寝台個室のシングルデラックス、5号車が元食堂車のフリースペース、他の車両は開放型の2段式B寝台でした。

A寝台個室のシングルデラックスは、洗面台を組み込んだ小さなテーブルのみを備えた古いタイプで「サンライズ出雲」と比べると、設備面では見劣りしました。

B寝台は、通路と直角にベッドを並べた2段式で、ほとんどのブルートレインに連結されていました。浴衣を備え、ベッドの長さは195センチ、幅は70センチ。カーテンを閉じれば、プライベートな空間でゆっくり休めました。

23時00分発の「銀河」は寝台“急行”列車。東海道新幹線の最終よりも遅い時間に東京駅を出発し、始発よりも早い時間に大阪駅に到着する東海道線の列車で、忙しいビジネスマンなどに利用されていました。“急行”だったことで料金を安く抑えていて、全区間を利用すれば、“新幹線の普通車指定席”と“銀河のB寝台”との差額はプラス1300円ほど。この差額でゆったり寝て行くことができたのです。

「銀河」の廃止は2008年3月。筆者は、廃止直前の2月に「銀河」のA寝台に乗車しました。A寝台は1号車で開放型の2段式。B寝台との違いは、中央の通路を挟んで進行方向にベッドが並んでいたことです。列車が進む方向と体の向きが同じなので寝心地が良く、何よりベッドの幅が下段で93センチ、上段で88センチもあって、本当にゆったりできました。今思えば、贅沢な時間の使い方ができた旅でした。

JR発足当時の時刻表には…寝台列車がたくさんあった!

深夜の東海道線を走り抜けた寝台列車ブルートレイン。昔は、たくさんの列車が走っていました。 JR東海の静岡支社には、JR発足当時から現在までの時刻表が、ダイヤ改正号を中心に1年に1冊ずつ保存されています。

日本国有鉄道(JNR)が編集したJR発足時の1987年4月号の時刻表を今回の取材で特別に見ることができました。 表紙は、金色に輝くJRマークと、北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州のJR各社カラーのデザインです。

寝台特急列車のページには東京発の列車がずらりと並んでいます。 東海道本線・山陽本線の系統では、16時40分発「さくら」長崎・佐世保行き、17時05分発「はやぶさ」西鹿児島行き、18時05分発「みずほ」熊本・長崎行き、18時20分発「富士」宮崎行き、19時05分発「あさかぜ1号」博多行き、19時20分発「あさかぜ3号」下関行き、19時50発「臨時・あさかぜ81号」博多行、21時05分発「瀬戸」宇野行き。これに京都から山陰本線に入る「出雲1号」「出雲3号」、急行「銀河」が加わります。

37年前には、ブルートレインが10往復以上も走っていたのです。静岡放送のアーカイブ映像には、往年の寝台列車の走行シーンが記録されています。

しかし、新幹線のスピードアップや夜行高速バスの充実、低価格で宿泊できる施設の登場などで、夜行列車は徐々に利用客を減らします。車両も老朽化し、ブルートレインは次々と廃止されたのです。

寝台列車の“明るい未来”を感じた26年前 今こそ評価される時代も…

その流れが加速しようとしていた1998年、新型電車285系で登場したのが「サンライズ瀬戸・出雲」。時代のニーズに合わせた個室を中心とした車内からも、寝台列車の“明るい未来”を感じたものでした。

285系は5編成35両が製造されましたが、その後、増備はなく、登場から26年が経過しようとしています。 鉄道車両の寿命は平均で30年程度といわれます。285系は車内のリニューアルはされているものの、新型車両を導入する声は聞こえてきません。

コロナ禍を経て生活様式が変化し、ゆったりとした時間の使い方が見直されるようになりました。個室寝台のサンライズ号は「密」を避け、プライベートな空間が確保できる今の時代に適した乗り物でもあります。

今こそ「寝台特急の旅」が評価されるタイミングですが、そうした旅ができなくなる時代が、そう遠くない将来にやってくるのかもしれません。

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