2024年展望 手探りでの脱却一歩一歩

 【論説】希望に満ちた新年の幕開けには程遠い現実が世界や日本を包み込んでいる。ウクライナやパレスチナ・ガザの戦火は大勢の人命を奪いながら越年した。国内では政治とカネの問題が岸田文雄政権を揺さぶる。霧の中を手探りで進むような1年が始まったが、脱却へ一歩一歩刻むしかない。

 ■国連改革を軸に■

 二つの戦争を前に、国際平和と安全維持に責任を負う国連安全保障理事会は機能不全の状態が続く。ウクライナ問題では当事者のロシアが、ガザ問題ではイスラエルの後ろ盾である米国が、それぞれ拒否権発動を繰り返した。国連自体が世界の分断を加速させる場と化した。

 国連は2025年に創設80年を迎えるが、強者が弱者を踏みにじる現実を座視するようでは存在意義はない。国際社会の総意が反映可能な組織へと変わる必要があろう。平和と安定を取り戻すため、24年は国連改革を軸に国際秩序の再建を始める年にしなければならない。

 今年は世界的な選挙イヤーでもある。1月13日には台湾総統選があり、与党候補が勝利した場合は中国との戦争の危険が高まるとの指摘もある。最注目なのが米国の大統領選だ。高齢批判がやまない現職のバイデン大統領の対抗馬はトランプ前大統領が最有力視される。ただ、トランプ氏返り咲きなら、世界情勢は一気に流動化しかねない。

 ■政治の病巣一気に■

 日本の政治の病巣が一気に噴き出た23年末。国民の不信は頂点に達しており、小手先ではない「令和の政治改革」が求められている。少なくともパーティーに関しては政治資金収支報告書への記載基準を「20万円超」から一般の献金と同じ「5万円超」に引き下げることは不可欠だし、収支報告書の不記載・虚偽記載に対する厳罰化も必要だ。

 岸田首相は臨時国会閉会に際した会見で「国民の信頼回復へ火の玉となって先頭に立ち、取り組んでいく」と表明したものの、その後の対応としては青年・婦人部局から意見報告を求めたり、年明けに政治改革に関する新組織立ち上げを決めたりしただけだ。

 忘れてはならないのは国から議員1人月額100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文通費)の見直しだ。民間や地方議会では使途の公開は当たり前で、国会議員だからできないは通らない。改革をこれ以上放置するならば支給される資格はない。

 ■「裏」払拭には■

 鉛色の空に覆われ、雪が降りしきるこの時期、この言葉を思い出す県民はいないだろうか。「裏日本」は差別表現だとして今や死語となり「日本海側」に置き換わった。ただ、明治期以降に工業地帯や高速交通網などが急速に発展し、人口も膨張した太平洋側に対し、人材を供給し続けた地方の構図は今も残る。

 そうした構図を変えると期待を集めたのが、新幹線だろう。今年3月、ようやく福井県内にもその勇姿がお目見えする。国が北陸新幹線の整備計画を決定したのは1973年であり、実に半世紀がかかった。杉本達治知事は年末会見で「福井への注目が高まってきている」と強調。2次交通への対応を急ぐ考えも示した。「100年に1度」の好機であり、観光地などの一層の磨き上げが欠かせない。

 「裏」イメージの払拭にはやはり敦賀以西が関西とつながってこそだろう。早期着工のためにも県内開業効果アップへの取り組みを一歩一歩積み上げなければならない。

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