【辰年】岩手のマニアックな「竜」探してみた ①ドラゴンレール

 2024年の干支は「辰」。辰巳天井、昇り竜…。とにかく上向きで、縁起が良さそうな竜の年。県内には関係する物や場所が数多くあるはず。県南に拠点を置く若手記者が「竜」の名が付くあれこれを各地で探しました。お薦めスポットを紹介します。

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最初のターゲットは?

 毎年干支にちなんだ新年号企画に取り組んでいる、入社3年目の私たち。「来年は『辰』か…」と、おのおのが身近なドラゴンを探し始めました。一関支社にいる私は…あ、まさに「ドラゴン」ってものがあります!

 それはJR大船渡線。一関市と気仙沼市を通る列車で、「ドラゴンレール」という愛称で親しまれています。まずは乗ってみなければと、同期の村田美和記者(27)と一ノ関駅に向かいました。

 

映像あり

 岩手県在住でありながら、初めての乗車。車窓から見える木々や田、川や民家など、自然あふれる風景が私たちを癒やしてくれました。曲がりくねった線路も軽やかに走り抜けていく姿は、まさに「龍」!中島みゆきさんの「銀の龍の背に乗って」が、頭の中を駆け巡ります。

 

車の方が早く着く

 午前10時17分、一ノ関駅発。午前11時45分、気仙沼駅着。1時間半ほどのプチ旅行。のんびりと列車旅を楽しめましたが、実は一関市から気仙沼市に向かう場合は、車の方が早いんです。

 国道284号を行くと、約1時間で到着します。どうして列車の方が時間がかかってしまうのか…。これには、ドラゴンレールが経由する駅に理由があります。

 

ある場所をわざわざ経由している

 ドラゴンレールは、一関市大東町の摺沢駅を経由する、大きく湾曲した路線になっています。大船渡線を1918(大正7)年に計画を開始した当初は、摺沢を経由しない予定でした。一ノ関―気仙沼間を直線的に結び、千厩を通って大船渡に北上するルートになるはずだったのです。

 

 しかし、摺沢の大資産家である佐藤秀蔵を中心とした大船渡線の誘致運動や、摺沢生まれで、当時の与党だった立憲政友会の国会議員の働きかけなどがあり、路線計画の変更を可能にしたのです。

摺沢駅にある、地元の大資産家佐藤秀蔵(右)、良平(左)親子の像

 住民の熱意に加えて、摺沢が木材の一大産地だったことも大きく関係していて、資材運搬の面でも、摺沢駅は重要な役割を果たしていたのだといいます。

 

我田引水ならぬ…

 この計画の前には「磐仙鉄道」「磐仙軽便鉄道」という2つの路線案もあったが、実現に至りませんでした。現在の形は、千厩や気仙沼地区の住民らも誘致に励んだ結果として、よく「我田引鉄」と例えられます。令和になった現代でも高校生の通学など、「地域の足」として市民の暮らしを支えています。

(一関支社・佐々木杏里)

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