「おせち料理」にも“食中毒リスク”!? 予防のための「3原則」実践方法を専門家が指南

かつては保存食だったおせち料理だが…(MASANORI SEIYA / PIXTA)

目にも華やかな「おせち料理」は、日本のお正月を象徴する食文化ではないだろうか。かつては食事の準備を三が日は休めるようにと、日持ちを良くするため、濃いめに味付けされた食材が多く重箱に詰められた。今でも、正月三が日を通して楽しむ家庭が多いのではないだろうか。

近年では、「高級おせち」や「和洋折衷おせち」、カロリーや塩分に配慮した「健康志向おせち」など、消費者のニーズに合わせたさまざまな種類が販売されている。

合理的に進化を遂げてきたおせち料理だが、こうした意識や住環境の変化に伴い、保存・衛生面では気を付けるべき点もあるという。

おせちでの食中毒リスクは高まっている!?

公益社団法人「日本食品衛生協会」の横田久美さんは、「かつてのように、常温でおせちを保管しつつ、保存食にする側面がかなり減ってきているのではないでしょうか」として、その理由についてこう語る。

「家で作るものも、お店で購入するものもそうですが、みなさん健康志向になったこともあって、甘さ控えめ、塩分も少なめで作られているものが増えていると思います。

かつては、おせち料理というと、塩分を濃くしたり、甘くしたり、すごく酸っぱくするという風に、古くからの食品加工の知恵を活かして、食品を食中毒細菌が増殖しにくい状態にしていました。ところが、近年のおせちはそうとは限らない。もう『おせちだから、常温でずっと取っておけるよね』という感覚ではありません」

おせち=保存食はもう古い?(osanpo-post / PIXTA)

さらに住環境の向上が皮肉にも食中毒リスクを高めていることも考えられる。食中毒の原因菌が増殖しやすい「危険温度帯」は10~60℃と言われるが、現代の住環境で、台所の室温が10℃以下という環境は少ないのではないだろうか。

この危険温度帯に食品を長く置くほど、食中毒のリスクは高まるのだ。

「おせちに限らず食材の保存は危険温度帯を避け、冷蔵をきちんとする、もしくは、きちんと加熱をして熱い状態で食べることが食中毒予防には、大切です」(横田さん)

調理する派、購入派それぞれが気を付けること

おせち料理は、どのように保存し食べるのが“食中毒リスク”を下げるために適切なのか。横田さんは「おせち料理に限らず、(菌を)付けない、増やさない、やっつける」が食中毒予防の基本の考え方だとし、家庭で調理するケースと、購入するケースに分けて次のように説明した。

食中毒予防の3原則「(菌を)付けない、増やさない、やっつける」厚生労働省「食中毒予防のポイント(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html)」より

・家庭で調理するケース

「調理の際は『(菌を)付けない』ことがまず大切です。調理をする前の手洗いをしっかりし、調理中も生の肉や魚を扱ったら、その都度しっかり手洗いをすることや、野菜類などの食材をよく洗うことです。お刺し身など生で召し上がりたい物があれば、食べる直前まで冷蔵しておくなど『(菌を)増やさない』ように心がけましょう。

たくさん作って、三が日ずっと食べようと考える方が多いと思いますが、その際の保存容器も清潔なものを使って保存(冷蔵や冷凍)してください。また、加熱できるものは召し上がる前にしっかり中心部まで加熱して召し上がってください。電子レンジは“加熱むら”に気を付けて、加熱途中でかき混ぜるなど、全体がちゃんと熱くなるように工夫しましょう。

保存容器から取り分ける時の菜箸なども清潔なものを使ったり、おせち料理を取り分ける時もできるだけ取りばしを使っていただく方が良いでしょう」(横田さん)

・購入するケース

「お重ごと購入される場合も、『かまぼこ』『栗きんとん』など個別に購入してご自身でお重に詰め変える場合も、パッケージに書いてある保管場所・保管温度・賞味期限をしっかり守っていただくことが1番重要です。

期限表示の期限は、一度パックを開ければ、パックに書いてある期限は“なかったこと”になるので注意が必要です。適切に保存し、できるだけ早く召し上がるようにしてください。その日に食べる分だけ盛り付けることも食中毒予防として有効です」(同前)

購入品は開封後できるだけ早く食べることが食中毒予防になる(hiroyoshi / PIXTA)

“無病息災”を祈る「おせち」を食べて食中毒になっては元も子もない。清潔を心がけて、元気に年明けの食卓を楽しみたいものだ。

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