新NISA、定額減税、住宅ローン減税優遇…2024年上半期の見逃せない【お金のイベントカレンダー】

2023年は、2020年から約3年続いたコロナ禍の影響や、ウクライナ戦争による物価高などもあり「家計管理が大変だった…」という方、「自分なりの節約術を確立し、家計は順調」という方、それぞれ思うことがあるのではないでしょうか。

2024年のお金のイベントは、例年よりも盛沢山。節税で家計収支が楽になったり、資産をより効率よく増やせたりするでしょう。

今回は、上半期のお金のイベントをわかりやすくまとめました。


上半期(1月~6月)のお金のイベントを一覧表で確認してみましょう。

筆者作成

2024年1月からは新NISA制度が開始

今までのNISAを大きく進化させた新NISA制度が始まります。新NISAの特徴は以下のとおりです。

・非課税保有期間は無期限

・期限なく、いつ投資してもOK

・「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の併用可能

・「成長投資枠」の年間投資上限は240万円、「つみたて枠」の年間投資上限は120万円、計360万円

・生涯にわたる非課税限度額(生涯投資枠)は1800万円。うち成長投資枠は1200万円という枠組みの新設

新NISAは運用で得た利益に対して通常約20%かかる税金が非課税となること、長期投資をすることで、得られた利益を運用に回し、さらに利益を生み出す複利効果が期待できます。

ただし、新NISAは、投資信託や株式等に投資をするためリスクを伴います。ときにはお金が減ってしまうこともありますが、長期間にわたり、分散しながら、積み立てることで、たとえ短期的な損失も長い目で見ればカバーできる可能性が高まります。これからの人生での様々なイベントを支える資金作りとしては効果的な方法です。

1月から産前産後の国民健康保険料が免除に

フリーランスなどで国民健康保険に加入している方の子育て負担を軽くするため、産前産後の国民健康保険料が免除されます。対象期間は、出産(予定)日が属する月の前月から出産(予定)日が属する月の翌々月までの計4か月間です。また、多胎妊娠となるときは、出産(予定)日が属する月の3か月前から出産(予定)日の属する月の翌々月までの合計6か月間です。

今回の改正は、2019(平成31)4月から始まった、産前産後期間の国民年金保険料免除制度に続くもので、対象期間は先述の国民健康保険料免除制度と同じです。産前産後期間として免除された期間は保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。

ここ近年、フリーランスという働き方を選ぶ人が増えています。フリーランスは会社員と違い、収入が安定していません。もし、出産で、仕事をセーブすれば、たちまち収入が少なくなることも考えられます。それであれば、安心して出産に踏み切れないかもしれません。今回の改正で、フリーランスの方も安心して出産できるのではないでしょうか。

1月から低所得者世帯向けの定額金給付が順次開始

低所得者世帯向けの物価高対策で定額金が給付されます。定額金給付の対象世帯は、2023(令和5)年12月1日時点の住民データをもとに抽出されます。対象世帯には、自治体から申請書類が発送されます。一部の自治体においては2023(令和5)年末から書類発送が始まるようですが、ほとんどは、1~2月から準備が始まります。実際に給付金が手元に入るのは早くて1月末、遅い場合は2~3月ぐらいになりそうです。給付額は以下のとおりです。

・所得税と住民税(均等割)が非課税となる世帯には「7万円」が支給されます

・住民税の所得割が免除されて均等割だけを納めている世帯には「10万円」が支給されます

さらに、上記の世帯で18歳以下の子どもを育てる場合、子ども1人あたり「5万円」が上乗せされます。

子育て世帯や若年夫婦世帯に対する住宅ローン減税優遇

住宅ローン減税は、年末の住宅ローンの残高に応じて所得税や住民税が減税される制度です。2024(令和6)年の入居分から減税の対象となる借入上限額が引き下げられます。しかし、子育て世帯および若者夫婦世帯の子育てを支援するため、借入上限額は、2024年(令和6)分もそのまま維持されます。

【2024(令和6)年の子育て世帯および若者世帯の住宅ローン借入限度額】

・新築の長期優良住宅:5000万円を維持(改正後は4500万円)

・新築の省エネ基準に適合した住宅:4000万円を維持(改正後は3000万円)

・新築のZEH水準省エネ住宅※: 4500万円を維持(改正後は3500万円)

※暖冷房など消費エネルギーを0にする省エネハウスのこと

2月~3月は会社員・公務員も「確定申告」をすれば所得税が還付となる

確定申告は、自営業者などが、前年の所得と所得税を計算して、税金の支払いを精算する手続きです。期間は、毎年2月16日~3月15日までです。確定申告は、主に自営業者などが対象になります。しかし、会社員や公務員も医療費控除などを受けることで、納め過ぎている所得税が戻ってくるかもしれません。

会社員や公務員で以下に該当する人は確定申告をしましょう。

(1)年末調整で生命保険控除の申請を忘れた人

(2)2023年の途中で会社を退職し、年末調整を受けていない人

(3)扶養家族の国民年金保険料を代わって支払った人(社会保険料控除が適用になる)

(4)2023年中に医療費が多くかかった人(医療費控除が適用になる)

(5)災害や盗難などで資産に損害を受けた人(雑損控除が適用になる)

(6)副業での所得が20万円超

以下に、医療費控除・セルフメディケーション税制、副業をした場合について補足します。

●医療費が10万円を超えている人が対象になる医療費控除

毎年1月1日~12月31日までに支払った自分と同一生計の家族の医療費の合計が10万円以上の場合、医療費控除を受ければ、所得税を安くすることができます。医療費の対象になるものには、病気の治療費、通院にかかる交通費、薬代、あん摩マッサージ、はり、きゅうなどの整体による施術費用などがあります。

医療費控除の金額は「実際に支払った医療費の合計額-保険から支給された給付金-10万円」で計算できます(医療費控除の上限は200万円まで)。

●1万2000円を超えて市販薬を買った人が対象になるセルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例制度です。

健康の維持増進及び疾病の予防への取組みを行う人が、特定の医薬品を購入した際、所得控除の対象になります。特定の医薬品の購入費用の上限は年間10万円で、実際に所得控除できるのは「10万円-1万2000円=8万8000円」です。

特定の医薬品に該当するのは、「スイッチOTC医薬品」で、詳しい情報は厚生労働省のHPで確認できます。

なお、医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできません。両方ある場合は、有利な方を選んで申告しましょう。

●副業で「収入-経費=20万円超」は忘れず確定申告を

副業での前年所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。副業先に「支払調書」の発行を依頼して、確定申告の準備を整えておきましょう。また、ダブルワークの場合も、年末調整をおこなった主になる会社以外の所得が20万円を超えたのであれば確定申告が必要です。

6月から所得税と個人住民税の定額減税開始

納税者本人と扶養家族を対象に所得税は3万円、住民税は1万円のあわせて1人あたり4万円が減税となります。納税者本人と扶養家族をあわせて3人の場合は12万円が減税されます。ただし、年収2000万円を超える(合計所得金額が1805万円超)富裕層は対象から外れます。会社員や公務員の定額減税は、2024(令和6)年6月1日以後に支払われる給与から始まり、一度に控除できない場合は、翌月に繰り越しされます。

2023(令和5)年分の住民税は6月から切り替わる

住民税は、その年の1月1日現在で居住している人が、住所地の自治体に対して納める税金です。住民税は、徴収方法が「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。会社員や公務員の方は給与から天引きされる「特別徴収」です。直近の2023年分の所得をもとに住民税を計算して毎年6月から切り替わり、翌年5月までの12回に分割して納付します。しかし、納めるべき住民税から定額減税分の控除が終わるまでは徴収されません。

自営業者やフリーランスは、本人に各自治体からの納付書が届く「普通徴収」です。すでに、定額減税分が織り込まれた納税通知書が届きます。

ふるさと納税や住宅ローン減税を利用した場合、定額減税が満額受けられなくなるかも

6月に住所地の自治体から、住民税の税額を通知する「住民税決定通知書」が届きます。ふるさと納税を利用した人は、「住民税決定通知書」の中の「寄付金控除」または「税額控除額」の金額が、2023年の「ふるさと納税額-2000円」とおおよそ同額になっているか確認しましょう。近い数字になっていれば、無事に税額控除されて自己負担は2000円だけで済んだことになります。

なお、2023年分の確定した住民税額からは、ふるさと納税や住宅ローン減税と定額減税が行われます。先に控除されるのはふるさと納税や住宅ローン減税になるため、残った住民税が定額減税の控除額よりも少ない場合は、満額の定額減税が受けられないことになります。これについては、後に別の対応が発表となるかもしれませんので注意しておきましょう。参照:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について

2024年に見逃せないのは「定額金給付」や「定額減税」

「2024年はお金を貯める!」と思っている方は、今までよりも内容が充実した新NISAをはじめましょう。また、2024年に見逃せないのは「定額金給付」や「定額減税」。

定額金給付は、自宅に申請書が届いたらすぐに対応しましょう。定額減税は、6月から始まるのでしばらく間があります。折角の定額減税です。家計に最適な使い方を今から考えておきましょう。

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