さだまさし50周年ツアー全4夜の一挙放送、凄みを再発見

年末の『NHK紅白歌合戦』にも出演したさだまさし。彼の50周年コンサートツアー全4夜の模様が、1月3日にWOWOWにて一挙放送・配信される。

さだまさし 50周年コンサートツアー

さだまさしといえば、ある人は「俺より先に寝てはいけない」と歌う『関白宣言』を、ある人は『北の国から~遥かなる大地より~』のテーマ曲を、またある人はお盆の時期にテレビから流れてくる『精霊流し』を、はたまたある人は山口百恵に提供した『秋桜』や『案山子』を思い出すのではないだろうか。

日本人にとってさだまさしの音楽は、好む好まざるに関わらず、どこかで自然に耳にしているもの。つまりは原風景のようなもので、物語を読むように主人公の心情や情景が浮かび上がる抒情的な歌世界は、1973年のデビュー以来、多くの人に愛され続けている。

小説家としても活躍し、多くの作品がドラマ・映画化。NHK『今夜も生でさだまさし』をはじめ、テレビやラジオ番組のパーソナリティーとしても人気者を集めるなど、マルチな才能を発揮している点も、彼がたんなるミュージシャンには留まらない理由だろう。

中国を舞台にしたドキュメンタリー映画『長江』の制作で35億円の借金を抱え、見事に完済したエピソードをあっけらかんと語るなど、破天荒ながら気さくで明るい人柄にもファンが多く、2018年に発売されたファンブック『うらさだ』には、笑福亭鶴瓶、立川談春、カズレーザー、堀江貴文といった人物が愛ある言葉を寄せている。そんなメディア露出によって、令和の若者にもしっかり存在感をアピール。決して懐メロにはならない現役っぷりも比類がないものだ。

精力的なコンサート活動は、もともと借金返済のために始まったものだというが、2020年8月の時点で4425回を達成、現在も日本記録を更新中。さだのコンサートといえば、トークの長さ&おもしろさでも有名だが、抱腹絶倒の笑い話から涙ほろりの感動話まで、落語家さながらの話芸で観衆を魅了するミュージシャンもまた、さだまさし以外にいない。

さだまさし 50周年コンサートツアー

2023年にはデビュー50周年を記念したコンサート『さだまさし 50th Anniversary コンサートツアー2023 ~なつかしい未来~』を開催。今回、WOWOWで放送・配信されるのは、そのなかの「東京国際フォーラム ホールA」での全4公演となる。

第一夜は、彼の原点となるフォークデュオ・グレープの復活ライブ。第二夜は、彼と長きに渡って活動をともにしてきたツアーバンド・さだ工務店との安定のさだ節ライブ。第三夜は、さだ工務店のメンバーに管楽器が加わった華やかな構成で、ちょっと通好みな楽曲を披露したスペシャルライブ。第四夜は、作曲家で編曲家の渡辺俊幸が弦の編曲と指揮を担当し、さだ工務店のバイオリニスト・藤堂昌彦を中心としたストリングス編成によるライブ。

セットリストも編成も趣向もまったく異なる4つのステージを体験すれば、きっと、さだまさしという特異なアーティストの凄みを再発見できるはずだ。放送は1月3日・昼2時からWOWOWライブ、WOWOWオンデマンドにて。

文/井口啓子

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