6つも駅があるのに…新幹線「のぞみ」号が静岡県内に停車しないワケ JR東海に聞いてみた

1992年に運行開始となった東海道新幹線の「のぞみ」。東京~新大阪間を最速約2時間半で結ぶ夢の超特急ですが、静岡県民にとっては、「関係のない列車」といっても過言ではないかもしれません。

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なぜなら、静岡県には、熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松と東海道新幹線の中で最も多い6つの停車駅がありますが、「のぞみ」はどの駅にも停車しないのです。いったい、なぜなのでしょうか?JR東海静岡広報室に聞いてみると、次のような回答を得ました。

静岡駅と浜松駅の乗降人数を足しても…

<JR東海 静岡広報室>
「東海道新幹線では、東京~名古屋~大阪を最速で結ぶ『のぞみ』、それ以外の中核都市にも停車する『ひかり』、各駅に停車する『こだま』という、それぞれ使命の異なった3種類の列車を運転しており、需要に応じて列車の本数や停車駅を設定しています。静岡県内の各駅に停車する列車についてもこの考え方に基づいて設定しており、現状のダイヤとなっています」

JR東海によると、コロナ禍前の東海道新幹線の1日平均の乗降人員(2018年度)は、静岡駅で4万2414人、浜松駅で2万7462人でした。一方、東京駅は20万8,902人、新大阪駅は16万8,934人、名古屋駅は14万7,494人。

静岡駅と浜松駅の乗降人数を足しても、名古屋駅の人員に及ばず、現在の「のぞみ」停車駅に比べると、静岡県は需要が低いのが現状です。

そもそも「のぞみ」は、1992年3月、当時、運賃の値下げなどにより利用を伸ばしていた航空機に対抗するため、それまでの「ひかり」よりさらに速く大都市圏を結ぶ列車として誕生しました。

この年末年始、JR東海は「のぞみ」を全席指定席とし、1時間当たり最大12本を運行させることで、多くの人が着座できるようにしましたが、ピーク日ではほぼ終日満席状態。乗降人員の少ない静岡に「のぞみ」を停車させると、短時間で長距離を移動できるという「のぞみ」の役割が失われてしまうというわけです。

しかし、静岡県民にとって吉報と言えるべきニュースがありました。

停車回数が1.5倍に?

国土交通省は2023年10月、リニア中央新幹線が品川から大阪まで全線開業した場合、東海道新幹線の静岡県内の駅への停車回数は、1.5倍になるという試算を発表しました。

静岡駅では、現行37本が55本に、浜松駅では34本が51本となり、10年間で1679億円の経済効果が見込まれるとしています。リニア開業により「のぞみ」を利用していた一定数が「リニア」に移ることが予想されるため、静岡県内に停車する「ひかり」の増便が期待されるのです。

静岡市の難波喬司市長は、この試算について、次のように述べています。

<静岡市 難波喬司市長>
「いま、ひかりとこだまが停車してくれているが、あまり降りてもらえていない。停めた時に降りてもらえるような状態にするのが非常に大事だと思っている。リニア開業によって停車本数が増える時を待つ必要がなく、いま、この時点でそういう努力をしていかなければならない」

こうした中、JR東海は2024年3月のダイヤ改正で、静岡・浜松に停車する夜の下りの「ひかり」を1本ずつ増やすことを発表しました。

静岡で停車便が増えるのは、2008年のダイヤ改正以来、16年ぶりです。静岡県民は「のぞみの停車」を望みがちかもしれせんが、まずは静岡県内で降りてくれる人を増やし、「ひかり」の停車を増やすことが、利便性向上への近道かもしれません。

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