ポルシェ963が“4名体制”へ方針転換。アキュラのバトンも「ル・マンより休めない」と支持/デイトナ24時間

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは、今月行われるデイトナ24時間レースでドライバー4名体制へと移行する。チームのマネージング・ディレクターを務めるジョナサン・ディウグイドによれば、これは「ふたつの側面からの決断」であったといい、彼はこのレースのために編成したドライバーラインアップに自信を持っているという。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の幕開けを告げる恒例イベント、デイトナ24時間レースは、アメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで、1月27〜28日に決勝が行われる。

 2023年の同イベントでデビューしたポルシェ963では、1台あたり3名のドライバーを起用することを選択したペンスキーだが、来る2024年シーズン開幕戦には各4名を起用する。

 このドライバー4名化は2025年のイベントから義務化される予定だが、2024年のデイトナではGTPおよびGTDプロクラスのチームは1台の車両につき3人または4人のドライバー編成のいずれかを選択することができる。

 ペンスキーでは、6号車でニック・タンディとマシュー・ジャミネ、7号車でデイン・キャメロンとフェリペ・ナッセがフルシーズン参戦するが、デイトナでは6号車に同チームのWEC世界耐久選手権のラインアップであるローレンス・ファントールとケビン・エストーレが、そして7号車にはマット・キャンベルとジョセフ・ニューガーデンが加わることになっている。

「耐久レース、とくに(昨年の)デイトナでは、信頼性の観点から我々は必要な位置に到達していなかった。ペースについても、議論の余地があった」とディウグイドは語った。

「ライバル勢を見てみると、過去5年間の優勝車両は、4名のドライバーで戦っていた。さらにそれは、2025年には義務化される予定になっている」

「それらふたつの事実の組み合わせ、そして我々には非常に強力なドライバーラインアップがあるという事実を考慮した結果、今回(4人体制を)試してみてオペレーションへの影響などを理解しようというアプローチをとったまでだ」

「とくに我々のラインアップにおいては、フレッシュなドライバーを迎えることは悪いことではないと思う。我々は今年、そのアプローチをとることにしたのだ」

 ディウグイドによれば、12月にデイトナで行われたIMSA公認テストは、ドライバー4名体制によって生じる複雑さの一部を解決する良い機会となったという。

「それは、『ペダルは4人が乗るのに問題ない位置にあるのか』『シートはちゃんと機能しているか』『全員の無線やその他のものは機能しているか』といった、細々としたことだ。このようなテストでは、重要なことだ」と彼は言った。

「我々はポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの陣営内から人材を集めており、ジョセフを除いて全員がLMDhであれGTカーであれ、以前にデイトナでレースをした経験を持つ」

「しかし、テストデーやプチ・ル・マンのロード・アトランタにおいて、彼(ニューガーデン)は準備をするの充分な時間、クルマをドライブできたと思う」

■3名と4名、それぞれのメリット・デメリット

 デイトナ24時間を4度制しているウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティは、デイトナには常に4名のドライバーで臨んでいるチームだ。

 2024年のデイトナでは、インディカー・シリーズのエースであるマーカス・エリクソンが10号車アキュラARX-06に、そして2009年のF1世界王者のジェンソン・バトンが40号車アキュラARX-06に加わることになっている。

 デイトナ24時間レースへのデビューを控えるバトンは、4名編成の利点を主張している。

「かなりタフなコースだ。 休むヒマもあまりない」とバトン。

「(オーバル部の)バンクでさえも、身体に影響を与える。振動もあるし、ステアリングを握る手に伝わってくるんだ」

「ル・マンのような場所に比べて休むところがずっと少ないので、4人のドライバーラインアップとなることについては理解している」

「ひとりあたりのテストでの周回数は少し減るので、ある意味では難しくなる面もある。だけど(12月には)2日間のテストがあり、1月には3日間のテストがあるので、全員にとって充分な時間があるはずだ」

「充分な周回数を稼げるのなら、4人にしたほうがいいだろうね」

ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ(WTRアンドレッティ)から2024年のデイトナ24時間レースに参戦するジェンソン・バトン。左はチームメイトのコルト・ハータ

 一方で、フォード・マルチマチック・モータースポーツやコルベット・レーシング・バイ・プラット・ミラー・モータースポーツなど、いくつかのGTDプロチームは、これまでのコルベット陣営同様に、デイトナでもドライバー3名のラインアップとすることを選択した。

「僕らとしては、過去にはそれがうまくいった」とコルベットをドライブするトミー・ミルナーは言う。

「僕らはこれまで、クルマのエアコンがとても良く、甘やかされてきた。とにかく体力的にきついんだ。デイトナは、バンクなどに関してはそれほど悪くない」

「来年からは、4名にしなければならないみたいだね。3名編成の良い点は、プラクティスで(ひとりあたりが)より多くの時間が得られることだ」

「より自信を持ってレースに臨めるし、シートに座っている時間も多い」

「4人とするメリットもある。休憩時間が増えることは、とりわけレースの終盤を考えると素晴らしいことだ。だけど、僕はふたりのチームメイトに完全に満足している」

「2025年には4名に増えることは分かっている。だけど、どちらにもメリットとデメリットがあるんだ。それは僕が慣れていることだから、今年は何も変わらない。来年は違うだろうけどね」

2023年12月、IMSA公式テストでデイトナ・インターナショナル・スピードウェイを走行するシボレー・コルベットZ06 GT3.R

© 株式会社三栄