監督が語る!イ・ビョンホン、パク・ソジュンとの『コンクリート・ユートピア』撮影裏話

映画『コンクリート・ユートピア』写真左からパク・ボヨン、イ・ビョンホン、パク・ソジュン。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

(画像)スペシャルカットも!『コンクリート・ユートピア』場面写真

韓国では今年8月に公開され、瞬く間に観客動員数384万人を突破。第96回アカデミー賞国際長編映画賞の韓国代表作品にも選出されるなど、韓国の映画賞を数々獲得した映画『コンクリート・ユートピア』。

アジアをはじめヨーロッパ、南米と152か国で上映が決定し、世界中から注目を集めるエンターテインメント大作がついに日本でも公開される。

メガホンを執ったのは、鬼才パク・チャヌク監督の演出部にいた時代などを経て、独立したオム・テファ監督。さらに韓国を代表するトップ俳優のイ・ビョンホン、ハリウッドデビューを果たした「梨泰院クラス」などの人気俳優パク・ソジュン、注目の若手女優パク・ボヨンなどが集結した。

はたしてオム・テファ監督は、どのように本作を形作っていったのか、直撃インタビューした。

オム・テファ監督が語る!大ヒット映画『コンクリート・ユートピア』撮影秘話

なぜ韓国には似たような形のマンションが多いのか、興味があった

『コンクリート・ユートピア』オム・テファ監督。韓国からオンラインインタビューを行った。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

――本作は「第44回青龍映画賞」でイ・ビョンホンさんが主演男優賞、オム・テファ監督が監督賞、パク・ボヨンさんが人気スター賞と3冠を受賞。

さらに「第59回大鐘賞映画祭」では最優秀作品賞、イ・ビョンホンさんが主演男優賞、キム・ソニョンさんが助演女優賞、そして美術賞、音響効果賞、視覚効果賞と6冠を受賞されました。率直な感想をお聞かせください。

とてもうれしいです。撮影のクランクアップの日に、スタッフのみなさんに「今回この映画に参加したことについて、恥ずかしくない作品にします」と約束をしたんですが、その約束を守れたのではないかなと思います。

『コンクリート・ユートピア』大災害に遭ったソウルで唯一崩落を逃れた「ファングンアパート」。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

――原作は、キム・スニョン作家のウェブトゥーン「愉快ないじめ」の2部「愉快な隣人」だそうですが、この作品のどこに惹かれて映画化をお考えなりましたか。

韓国で言う「アパート」は日本の「マンション」に当たる住居となりますが、もともと韓国ではマンションがとてもたくさんあるため、普段から「なぜ韓国には似たような形のマンションが多いのだろうか」と気になっていました。

ひとつの住居形態であるマンションは、ただの住居というだけではなく、人の財産や価値をも表すという側面にもすごく興味がありまして。

そんなときに、偶然原作となるウェブトーンを見たところ、その作品の中でもマンションがクローズアップされていたんです。大災害の後、マンションの一棟だけが残っているというストーリーが面白い設定だなと。「これを映画化してみたいな」と思いました。

脚本と撮影で一番大事にしたことは?

『コンクリート・ユートピア』大災害のなか呆然とするミンソン(パク・ソジュン)とヨンタク(イ・ビョンホン)。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

――パク・ソジュンさんが車の中にいながら災害に巻き込まれるシーンや、荒れ果てたソウルの様子が映し出される場面もあります。本作では、斬新な設定と未曾有の大災害という極限のシチュエーションをCGや衣装、メイクでも再現していますが、撮影で大変だったところはありましたか。

今は韓国の住居形態がほぼマンションがメインになっていまして、ソウルでは韓国人の60%ぐらいがマンションに住んでいるんです。みなさんがマンションのことをよく知っているからこそ、CGの部分にしても、リアル感を出すのが一番大事だと考えました。

VFX(視覚効果)が少しでもファンタジー映画、もしくは漫画のように見えるといけない。一にも二にもリアル感を出すために、いろいろな撮影作業を決めて進めていく点はとても大変でしたね。

『コンクリート・ユートピア』団結していく住人たち。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

――先ほどウェブトーンが原作というお話をうかがいましたが、脚本化する際に、ご苦労された部分などありましたか。

先ほど少しお話ししたように、脚本についても、リアル感を出すのが最優先の目標だったといえます。原作ではすでにマンションで住民代表が決定していて、そこに外部から中学生が入ってくるのですが、映画化に当たって変更した点があります。

原作に出会う前に、もともとマンションに興味があったので、災難の状況の中でマンションの住民が役割を決めていく、という方向にしました。そしてマンションの話をリアルに見せるには、実際に住まいについて考える世代を中心に話が広がることを重視し、大人を中心としたストーリー構成にしました。

イ・ビョンホンと仕事をするのが監督たちの夢

『コンクリート・ユートピア』ファングンアパート902号室の住人ヨンタク(イ・ビョンホン)。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

――韓国でもトップ俳優のイ・ビョンホンさんは、「ファングンアパート902号室の住人ヨンタク」役で、存在感のない状態から横暴に振る舞う人格の変わりようや、その背景に驚かされました。イ・ビョンホンさんのキャスティングについて教えてください。

韓国で映画を作る監督であるなら、誰でもきっとイ・ビョンホンという役者と一緒に仕事をするのが夢だと思います。

劇中では、最初は存在感のないヨンタクが次第に変貌していく姿やそのギャップをきちんと表現しなければいけないため、それができるのはイ・ビョンホンさんしかないと思いオファーしたところ、受け入れてくださったのでとても感謝しています。

イ・ビョンホンさんは、私が演出部として初めて携わったパク・チャヌク監督が参加したオムニバス映画『スリーモンスター(日本タイトル「美しい夜、残酷な朝」)』(2004年)の作品『cut』で、主演されていました。当時からイ・ビョンホンさんは尊敬する大先輩。ですから、今回も現場で緊張しましたが、監督である私の意見を尊重してくれました。

『コンクリート・ユートピア』ファングンアパート602号室の住人ミンソン(パク・ソジュン)。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

たとえば役者として意見を出す際も、質問して私の意見を聞きながら、最終的なジャッジを任せてくれたことをすごく感謝しています。そんなイ・ビョンホンさんと一緒の現場での作業が、映画作りに本当に役に立ったと思います。

――パク・ソジュンさんは日本でも人気の高い若手俳優ですが、「ファングンアパート602号室の住人ミンソン」役にキャスティングした理由はなんでしょうか。

パク・ソジュンさんは、すごく素敵でハンサムな役者さんだと思うのですが、その一方で普通の人と同じような平凡な面も持っている役者さんだと感じていて。ですので、ミンソンとして、普通の住人としての演技をパク・ソジュンさんが自然に演じてくれると思ったからです。

素晴らしい俳優たちとの撮影秘話

『コンクリート・ユートピア』ファングンアパート602号室の住人ミンソンの妻ミョンファ(パク・ボヨン)。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

――パク・ソジュンさん演じるミンソンの妻「ミョンファ」役のパク・ボヨンさんをはじめ、「婦人会会長グメ」役で大鐘賞助演女優賞を受賞されたバイプレイヤーのキム・ソニョンさん、「ヘウォン」役のパク・ジフさんら女性キャストについても教えてください。パク・ジフさんは、オム・テファ監督のカン・ドンウォン主演映画『隠された時間』(2016年)にも出演されていますね。

はい。まずパク・ボヨンさんは、これまで見せてくれていなかった姿を、ファンとして見てみたいなと思いました。パク・ボヨンさんがもともと持っているすごく強い面や、決断力のある姿をさらに見たかったんです。

撮影の際、パク・ボヨンさんとミョンファという役についてたくさん話をしました。ミョンファは、ただ優しいだけのキャラクターではなく、自分の家族のために動くキャラクター。そういうところをパク・ボヨンさんが演じる姿を見たかったのでオファーしました。

そして、グメ役のキム・ソニョンさんの場合、グメというキャラクターはヨンタクよりももっと強いカリスマ性を持っていて、アパートの住民たちを引っ張ってくるキャラクターなんです。キム・ソニョンさんは『愛の不時着』ほかとても多くのドラマや映画で、お母さん役や脇役を演じられていて、演技が素晴らしい方。

『コンクリート・ユートピア』ファングンアパート207号室の住人で婦人会会長のグメ(キム・ソニョン)。 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

そんな女優さんが今回のグメのように、カリスマ的な役をしたらどうだろうと、彼女のそんな役を見たかったため、お声をかけさせていただきました。

パク・ジフさんは、おっしゃっていたように映画『隠された時間』で、短い出演時間ではありましたが、一緒に一度お仕事をしたこともあり、その後とても彼女が女優として成長されていて。韓国映画『はちどり』(2018年)で、パク・ジフさんが主演されていて、演技がとても素晴らしかったんです。

今回、パク・ジフさんが演じた役のヘウォンもたくさん出てはいないのですが、何かの背景を背負っている、ストーリーをすごく持っているという演技をしないといけないキャラクター。

パク・ジフさんの前の作品の印象からも、そういう役ができる役者さんだと思いまして、今回も声をかけました。こうしたさまざまなキャストによるストーリーとともに、日本のみなさんにも映画をご覧になっていただけたらと思います。

イ・ビョンホン、パク・ソジュンらが紡ぐ濃密な人間模様にも注目!

『コンクリート・ユートピア』ポスター。 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【映画情報】
世界を襲った未曾有の大災害により一瞬で廃墟と化したソウル。唯一崩落しなかったマンションは、生存者たちであふれかえっていた。無法地帯となり、マンション内でも不法侵入や殺傷、放火が発生。危機を感じた住民たちは主導者を立て、居住者以外を追放し、住民のためのルールを作って“ユートピア”を築き上げることに。

住民代表となったのは、902号室のヨンタク。職業不明で冴えないその男は、権力者として君臨したことで次第に狂気をあらわにする。そんなヨンタクに傾倒していくミンソンと不信感を抱くミョンファ。

極限の状況下でヨンタクの支配が頂点に達したとき、思いもよらない争いが勃発する。そこで明らかになる、その男の本性。はたして、男の正体とは?

『コンクリート・ユートピア』
2024年1月5日(金)全国公開
監督:オム・テファ
出演:イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドユン
配給:クロックワークス
2023/韓国/130分/ビスタ/5.1ch/原題:콘크리트 유토피아/英題:Concrete Utopia
字幕翻訳:根本理恵

(mimot.(ミモット)/ かわむら あみり)

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