黎智英氏の裁判で検察が冒頭陳述

壱伝媒集団(ネクストメディア)の創業者である黎智英(ジミー・ライ)氏と『りんご日報』の関連会社3社が外国勢力との共謀罪に関与した件の裁判が継続され、検察は1月2日午後も法廷で冒頭陳述を読み上げた。

1月2~3日の香港メディアによると、検察は黎氏を「過激な政治人物」と形容し、自ら民主派の断固たる支持者と称していたと指摘。黎氏は2019年の逃亡犯条例の改正反対運動に乗じて、『りんご日報』の幹部や「重光団隊」とともに外国または域外勢力と共謀して中央政府と香港特区政府に対する憎悪と反乱を煽り国家の安全を脅かした。 黎氏は外国に対中制裁を求めるため、香港に「CIA(米中央情報局)の影響力を与えたい」と公言したこともあり、元米陸軍副参謀長のジャック・キーン氏とも会談したことがある。彼らは長期的な接触と協力を持ち、米国と台湾での関連活動への参加に資金提供も行った。検察は、この事件の首謀者は黎氏で、「自由と民主を求める闘い」の名の下に、『りんご日報』を政治的プラットフォームとして利用し、扇動的な記事の掲載、元米国高官との連絡・協力、外国への対中制裁要請などを計画していたと主張。『りんご日報』幹部に外国の制裁を呼び掛けるよう英語版『りんご日報』を創刊するよう指示したという。

黎氏は19年6月以降、逃亡犯条例の嵐が激化する中、諸外国、特に米国に対し、中国に対する制裁や封鎖を繰り返し要請しており、19年7月には会談のため米国を訪れた。マイク・ペンス副大統領とマイク・ポンペオ国務長官と逃亡犯条例について協議し、米国が中国と香港の現指導者と当局者に制裁を加えるべきだとポンペオ氏に直接提案した。20年7月1日から2021年2月15日まで、黎氏は李宇軒氏、陳梓華氏、「攬炒巴」の劉祖廸氏、黎氏の米国人個人秘書マーク・サイモン氏、英国保守党人権委員会のルーク・デ・プルフォード委員、日本の山尾志桜里・衆議院議員、英国の投資家ビル・ブラウダー氏と共謀し、米国、英国、ニュージーランド、オーストラリア、日本、チェコ共和国、ポルトガル、アイルランドなどに対し、香港との犯罪人引渡し協定の停止、香港への武器輸出の停止、中国・香港との貿易の制限を求めた。

検察は、マーク・サイモン氏が黎氏に米国内の人々と会うよう手配し、「DC Dems」「Martin、Jimmy and Mark」などを含む複数のWhatsAppグループを設立したと主張。黎氏は元陸軍副参謀長のジャック・キーン氏と元米国国防副長官ポール・ウォルフォウィッツ氏に資金提供した。彼らは制裁やその他の問題について電子メールで黎氏やマーク・サイモン氏と連絡を取り、また『りんご日報』のトークショー「ライブチャット with ジミー・ライ」にも登場した。

米国議会で2019年8月22日に「香港人権と民主法案」が提出され、黎氏は香港のデモ参加者への支持を公に表明し、当時、米民主党の下院議長だったナンシー・ペロシ氏は19年9月にツイッターで、黎氏および民主党の李柱銘(マーティン・リー)氏らとの会談の集合写真をアップし、「香港の民主と法治のため、毎週街頭に出て非暴力闘争を展開する人々を全面的に支持し、称賛する」というメッセージを載せた。

黎氏は2020年6月10日にラジオ・フリー・アジアのインタビューに応じ、外国による中国への制裁と香港での国家安全法の施行を阻止することを主張。「香港人は非常に緊張している。ビッグデータによると、インターネットで最も人気のある検索は移民であり、多くの人が香港を離れることを考えている。外国からの制裁は非常に重要だ」と語った。当時のトランプ米大統領が選挙戦略として一連の制裁を利用すると信じており、新型コロナの流行のため米国では多くの人々が親戚を亡くしたり、事業を閉鎖したことから、有権者の支持を得るために中国に対する制裁を利用すべきと指摘した。

黎氏は19年3月から6月にかけて『りんご日報』を通じて「犯罪人引き渡し悪法」に言及し、「立ち上がって最後の防衛線を守ってください」と題した記事を含むいくつかの扇動的な記事を掲載しており、「その影響はまさにテロ攻撃による効果に相当し、中国本土の無法が香港の司法制度を無効にすることを許し、法の支配を人の支配に変え、私たちの個人の安全は扉のない鳥かごに変わる」「学校は政治洗脳の強制収容所となり、本や映画もそして文化活動は検閲されるだろう」と述べた。 これら記事は逃亡犯条例の改正案を阻止するために市民が街頭に繰り出して行進すべきであると締めくくられている。

20年5月28日のBBCニュースとのインタビューで黎氏は「香港版国家安全法が施行されれば香港は終わりとなり、香港の法治と自由が破壊される」と指摘。黎氏は、トランプ大統領の言葉だけでは不十分で、法の支配がなければ香港は国際金融センターとしての現在の地位を保つことはできず、香港のビジネスマンは保護されず、香港でビジネスを行う唯一の方法は、彼らをコントロールする権限を持つ役人に賄賂を渡することで、取引コストを大幅に増加させることになるだろう」と述べた。黎氏は香港には3万人の警察官がいると述べ、どうして3万人の警察官が若者のグループを統制できなかったのかを疑問視。黎氏は、トランプ大統領が「中国が香港版国家安全法を推進すれば深刻な結果が生じるだろう」と宣言したことを繰り返し、トランプ氏は約束を守る人物であり、米国が中国に対して厳しい制裁を科すことを期待していると述べた。

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