F1 2024年シーズンに注目すべき10のこと(1)メルセデスは復活できるのか

 2024年F1に向け、Grandprix.comの執筆陣が、来るシーズンに注目する10の項目をピックアップした。チームの運命、F1が抱える問題点、ドライバー市場など、多岐にわたるテーマを個別に紹介していく。

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 2023年のメルセデスW14は、ついに一度も勝利を挙げることができなかった。メルセデスにとって、2011年以来初めてのことである。ルイス・ハミルトンは、2年連続で表彰台の最上段に上がることができずに終わった。

 2014年から2020年までF1を席巻したメルセデスは、いまや中団に転落する運命にあるのだろうか。

 2023年には最終的にコンストラクターズ選手権2位をつかんだものの、3位のフェラーリとはわずか3ポイント差だった。8年連続コンストラクターズチャンピオンのメルセデスにとっては、2022年の3位、2023年の2位は敗北のようなものだろう。

2023年F1第19戦アメリカGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 だからこそ、2024年にメルセデスがどういうパフォーマンスを見せるのか、非常に興味深い。彼らはタイトル争いに戻って来ることができるだろうか。それとも彼らはいまや、“ベスト・オブ・ザ・レスト”を狙うしかないのだろうか。

 ドライバーたちの能力に問題がないことは間違いない。ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは、全チームのなかで最も強力なラインアップのひとつだ。ハミルトンは現役F1ドライバーのなかでは年がいっているとはいえ、今もクールなドライバーだ。今年1月に39歳になり、これまで332回のグランプリに参戦し、欠場したのはCOVID-19による2020年サクヒールGPの1戦のみという、F1史上、例を見ない実績を持っている。彼には全く衰えが見えず、メルセデスが2023年にランキング2位を確保できたのは、13歳年下のラッセルよりもむしろハミルトンの貢献の方が大きかった。

2023年F1第9戦カナダGP ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセル(メルセデス)

 ハミルトンとラッセルはふたりとも、メルセデスとの契約を2025年末まで延長した。これは、チーム代表トト・ウォルフがサポートするミック・シューマッハーや、メルセデス・ジュニアドライバーのフレデリック・ベスティにとっては悪いニュースだ。メルセデスは育成プログラムにおいて、17歳のスーパータレント、アンドレア・キミ・アントネッリに集中しており、シューマッハーとベスティがF1シートをつかむチャンスは低くなりつつある。

 ウォルフはF1界のなかで最も優れたチーム代表のひとりで、故ニキ・ラウダとともに、2014年から2021年にメルセデスを大成功に導いた立役者だ。ウォルフは、燃え尽きてしまったというわけではないだろうが、シーズンのうち何戦かはリモートで対応するようになっている。彼が現地にいない時期にチームが不調に陥る傾向が幾分見られるが、それは単なる偶然なのだろうか。

2023年F1第23戦アブダビGP トト・ウォルフ(メルセデスF1チーム代表)

 技術部門に目を向けると、2021年にジェームズ・アリソンに代わってマイク・エリオットがテクニカルディレクターに就任した時、2022年型W13はすでに完成していたのだが、メルセデスはここから低迷し、エリオットの技術的な指揮下で2022年と2023年の2シーズンでわずか1勝しか挙げることができなかった。この成績不振をエリオットの責任とするのは短絡的すぎるとはいえ、事実としては、エリオットはチームを離れ、アリソンがテクニカルディレクターの座に復帰した。

 メルセデスはF1で最も優れたインフラ、リソース、ドライバー、マネージャーを備えたチームだ。彼らがこの2年の流れを変えることができるのかどうか、それは2024年F1に注目すべき最大のポイントのひとつといえるだろう。

2023年F1第21戦サンパウロGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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