「銭まき」で福配り 新上五島・乙宮神社

参道からお金をまく還暦の男性ら=新上五島町、乙宮神社

 還暦などの神事を受けた人が神社の参道で硬貨をまく「銭まき行事」が2日、新上五島町立串郷の乙宮神社であった。全国的にも珍しい伝統行事で、関係者ら約60人が集まりにぎわった。
 田島久見権禰宜(ごんねぎ)によると、江戸時代中期に始まったとされ、当初は紅白の餅まきだったとも考えられるが、ここ数十年は硬貨をまくのが主流。
 厄年や還暦、米寿など人生の節目を迎える人が参拝し、おはらいを受けた後、参道の石段を下りながらお金をまく。集まってくれた人々に、感謝の気持ちとともに福を配ったり、厄を分けて持ってもらう意味があるという。
 人口減に伴い、行事の対象者も減っている。今年は還暦を迎えた同郷の団体職員、武石英彦さん(59)1人だけが参拝した。「ここで育ったのだから伝統通りにしたかった。健康で無事にこの日を迎えられてうれしい」と、家族らと一緒に威勢良くお金をまいた。親戚の男性は「硬貨を準備するのも大変だろうから、祝儀の一部を硬貨で渡した」という。
 田島権禰宜は「15年ほど前は7人ぐらいが銭まきをした。今年も行事を続けられてよかった」と話した。

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