道路寸断、海路で現地へ 位置情報使えず 震度5の余震で退去も 奈良市消防の第1次援助隊 - 能登地震

帰還した奈良市消防局の職員の労をねぎらう仲川元庸市長=同市八条5丁目

▶25人が任務終え帰着

 2024年能登半島地震の救助救難活動が本格化する中、1日夜から「緊急消防援助隊奈良県大隊」第1次隊に加わり、石川県輪島市で救助活動等を行っていた奈良市消防局の指揮隊、消火隊、救助隊、救急隊など7隊25人が4日午後1時半ごろ、任務を終えて帰着した。市消防局で出迎えた仲川元庸市長が「ご苦労様でした」と労をねぎらった。奈良市では第2次隊が被災地での活動を行っており、きょう5日には3次隊の出発が予定されている。

 同市では4日朝の「仕事始め式」でも、正月返上で被災地支援に向かった市消防局職員の活動を北昌男市消防局長が行うなど、例年とは違う新年の幕開けとなった。

▶奈良市長「応援できるところは可能な限り全庁挙げて」

 仲川市長は集まった約180人の職員を前に「新年明けましておめでとうございます」と呼び掛けたものの、「職員の皆さんには能登地震の対応で新年早々動いてもらっている。いつもなら新年の抱負など語るところだが、震災対応でまず現状を知り、今後どう知恵と力を合わせいていくか、考えたい」と訓示。「被災者支援を行っている(当該自治体の)最前線の職員もまた被災者。現地の職員が心折れずに仕事ができるよう、応援できるところは可能な限り全庁挙げて取り組みたいと思う」と述べた。市は前日の3日、かほく市に飲料水約9トンを搬送。職員による街頭募金では約200万円が集まっているという。

 市消防局も参加する緊急消防援助隊県大隊は、県広域消防組合、生駒市消防本部とで編成。第1陣は33隊223人。一行は同日午後、輪島市での消防・救助活動を経て帰県。奈良市消防職員25人を同市八条5丁目の市消防局前で出迎えた仲川市長は「現地での活動ご苦労様。元日に出発するという大変な事態で、現地へのアクセスも第1陣ということで思う通りに行かなかったと聞いている。今後も暫く現地支援は続く。ぜひ気概を持って任務に当たってほしい」と激励した。

▶刻々と変わる被災地の状況

 県大隊は1日夜に出発し、翌2日未明〜明け方に、宿営所となる金沢市の金沢競馬場に到着。活動場所となった輪島市町野町に向け移動を始めたが震災で道路は至る所で寸断。到着できなかったという。3日には陸、海、空に分かれ輪島市消防署に移動したが天候が悪く結局陸路・水路で移動し救援活動を行った。

 市消防局の指揮隊長を務めた奥西健児消防課主幹・指揮救助隊長(51)によると被災地の状況が刻々と変わり、道路状況も悪く高速道・一般道もたびたび迂回(うかい)を余儀なくされた。

 3日目になってようやく輪島市内で救助活動を行ったが、大型車両を投入できないなど困難を極めた。それでも大隊として救急11件、火災1件、救助1件、捜索の情報収集15件出動。地元消防の手が回らない119番の未対応の安否確認など被害状況の把握に努めた。「輪島市内は建物の倒壊など被害は甚大だった。道も崩れたり電線が垂れ下がるなどし、余震で状況が変われば車列が分断されたり引き返せない可能性もあった」と振り返った。

 「電波障害もあり、携帯などの通信機器類が使えない。最近は携帯の位置情報で確認することが多いが、電波が届かずツールが使えないので場所特定ができない。救助活動中に警報が鳴り、震度5強の余震で退去した場面もあった」と言い、「1次で得た情報を2次に伝えており、捜索活動に繋がることを期待している。人命救助に必要な72時間を超えた。生存者の発見は難しいが消防は全力で救助活動に入る」と語った。

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