元旦から日本EVに悲報!米国で外国ブランドの税制優遇打ち切り

日産「リーフ」が再びEV優遇策の対象外に(同社ホームページより)

新年早々から日本車メーカーに悲報だ。米国政府が1日、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の購入支援策であるインフレ抑制法による税額控除の対象車種を43車種から19車種に激減。米国車のみが対象となり、日産自動車<7201>のEV「リーフ」やドイツ車、韓国車などは対象外となった。

EV米国生産の準備を進める日本車メーカーに「冷や水」

一方、対象となるブランドはテスラとリビアンが各5車種、フォードが3車種、シボレーとジープが各2車種、クライスラーとリンカーンが各1車種。いずれも米国車メーカーのEVやPHVだ。

日本車メーカーはEVシフトで出遅れており、日産を除けば直ちに販売への影響はない。ただ、トヨタ自動車<7203>が米ノースカロライナ州で建設中の車載電池工場に総額で約139億ドル(約2兆円)を投資するなど、米国でのEV量産の準備を進めている。このほかにもホンダ<7267>や日産、SUBARU<7270>もEVの米国生産を始める方針だ。

しかし米国で税額控除の対象外となると、現地生産する意味がなくなる。次期大統領選挙でバイデン大統領の政敵であるトランプ前大統領が当選しても、「アメリカ・ファースト(至上主義)」を掲げるだけに米国製EV防衛策は継続される可能性が高い。中国に次ぐEV市場である米国での競争が不利となると、同国をEVシフトの突破口としたい日本車メーカーにとっては大きな痛手となる。

EV防衛策は選挙を目前としたバイデン政権だけが強引に推し進めようとしているわけではない。しかも、ターゲットは外国車メーカーだけではない。自国メーカーですら、保護の枠組みから外されかねない状況なのだ。その具体例は、米フォード・モーターの完全子会社が米ミシガン州で寧徳時代新能源科技(CATL)と技術提携して建設している車載電池工場。

同工場で生産される電池について、2023年9月に米連邦下院エネルギー・商業委員会の所属議員26人が「米国の電気自動車(EV)供給網を支配しようとする中国のもくろみを支援し、対中依存を強めて国家安全保障を危うくしかねない」とする書簡を送付したのだ。


「それならば…」と簡単に撤退できない

議員に圧力をかけているのは、全米自動車労組(UAW)やライバルの米ゼネラル・モーターズ(GM)。フォードの電池工場に対して「懸念される外国企業」規則を厳格に適用するよう、議会や政府に働きかけている。この主張が認められれば、同工場製の電池を搭載するフォード製EVはインフレ抑制法による税額控除の対象外となる。

米国産EVですら優遇策の対象となるのに厳しい審査と制約を受ける米国。日本製EVが「お目こぼし」を受ける可能性はほとんどないと考えておく方が良さそうだ。日の丸EVでは「リーフ」が昨年10月にインフレ抑制法の対象に返り咲いたばかり。わずか2カ月ばかりで対象外となった。

外国車メーカーが米国で生産したEVを補助金なしの割高な価格で販売するか、米国からの輸出に振り向けてもらえば、自国の雇用増になると同時に自国メーカーの保護にもつながる。米国にとっては極めて都合の良い理想的な展開だろう。

そうなれば外国車メーカーが米国生産から一斉に撤退するリスクがありそうだが、「リーフ」のように優遇策の適用を復活する「見せ球」もあり、巨額投資を決めた外国車メーカーは簡単に撤退できそうにない。日本車メーカーは、米国政府の手玉に取られている状態と言えそうだ。

文:M&A Online

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