長崎県トラック協会 障害者、出所者の雇用検討へ 人手確保と社会貢献が狙い

人手確保が喫緊の課題となっている運送業界=諫早市貝津町、諫早トラックステーション

 全国的に人手不足が深刻化している運送業界。改善策の一つとして、長崎県トラック協会は今年から会員事業者による精神・発達障害者や刑務所の出所者らの雇用に向け、検討を始める。法務省福岡矯正管区矯正就労支援情報センター(コレワーク九州)によると、協会として取り組むのは全国的にも珍しい。協会関係者は「人手確保と社会貢献。就業が困難な人たちの雇用創出の事例としても進めていきたい」としている。
 同協会によると、県内にも障害者や出所者らを受け入れている事業者はあるが、まだ少数派。運転手だけでなく、積み込みや仕分けといった倉庫作業や事務など受け入れる職種は幅広く、ある事業者は「例えば記憶力に優れた特性を持つ人は配送先の順路を完璧に覚え、運転手をサポートしている。適材適所の仕事がある」と強調する。
 同協会は雇用の選択肢を広げる狙いで、今月に初めて研修会を開く。コレワーク九州、長崎労働局、長崎刑務所の関係者らも参加予定だ。
■全国に波及を
 2022年矯正統計年報によると、刑事施設に戻った再犯者の約7割が無職だった。コレワーク九州の担当者は「過去を隠して職を探し、履歴書の『空白期間』を問われ、仕事に就けないケースが多い」と指摘。出所者と把握した上で雇用し、更生を支える「協力雇用主」への登録を全国で呼びかける中、同協会の動きに「受け皿の拡大」を期待。「全国に波及していってほしい」とする。
 前出の事業者は「障害者や出所者の雇用は簡単ではない。彼らの置かれた状況を理解することから始め、一人ずつでも雇用していくことができれば、結果的に人手不足の解消にもつながっていくはず」と先を見据える。
■600人超が不足
 同協会は昨年11月、加入事業者446社(霊きゅう事業者除く)を対象に実態調査を実施し、322社から回答を得た。人手不足感を尋ねる項目では、217社(67.4%)が「不足している」と回答。保有車両数が多い企業ほど「不足」とする回答が多く、県内で600人超が不足している実態が浮かび上がった。
 さらに、時間外労働に年間960時間の上限規制が適用される今年4月以降、半数以上の事業者が「現在の運転者数で対応できない」という見通しを示した。運転手の平均年齢は「50代」が181社(56.6%)で最多、「40代」が109社(34.1%)、「60代以上」が20社(6.3%)で続いた。
 同協会の担当者は「若年層の運転手が少なく、10年後は60代以上が半数を超える。年齢が上がれば体力的に厳しく、辞める人も増えていく。人手確保は喫緊の課題」と危機感を口にする。

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