寒がる妻の体さすり、夫婦で生き埋め 3日後、無念の対面

がれきに道を阻まれた救急車。救助活動は難航している=輪島市鳳至町

 能登半島地震で甚大な被害を受けた輪島市門前地区では4日、懸命な捜索生き埋めになった家人の救助活動が進められていた。(前輪島総局長・中出一嗣)

 4日午前9時ごろ、門前町高根尾の渡辺重光さん(70)は、がれきの中から運び出された妻の秋美さん(65)と、約70時間ぶりの対面を果たした。

 地震発生時、夫婦は1階でテレビを見ていた。元日の和やかなひととき。突然の揺れに、なすすべもなく、2人とも落ちてきた2階の生き埋めになった。

 「村の人がすぐに助けに来るから」。渡辺さんはがれきの下で、寒がる秋美さんの体を手でさすり、一緒に助けを待った。しかし、秋美さんの体はだんだん冷たくなり、しばらくして声がしなくなった。

 数時間後に渡辺さんは、近所の住民によって救助されたが、秋美さんは柱の下敷きになっていて、動かせなかった。「もう冷たくなっとるし、これ以上はみんなが危険や」。渡辺さんは周囲に頭を下げ、避難所に身を寄せた。

 輪島市内では、生き埋めが100件を超えるとの見方がある。渡辺さん方に消防隊員らによる救助が入ったのは、地震発生から3日後のことだった。家から運び出された秋美さんの体を、渡辺さんは、もう一度さすった。「寒かったやろ。早く出してやれんで、ごめん」。声が震えていた。

 門前町走出の民家では、家族で1人取り残された年配女性の救助活動が行われ、子や孫は手で顔を覆い、泣き崩れながら作業を見守っていた。

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