「津波が来るぞ」必死で孫救う

津波で流された家屋や車=5日午後2時半、能登町白丸

 「津波が来るぞ」。絶叫が響いた後、能登町白丸地区は一瞬で水に飲み込まれた。5日、集落を訪れると、道路は一帯が砂で覆われ、木材が至るところに散乱していた。(経済部・室屋祐太)

 「胸まで水に漬かった。孫だけでも助けたい一心だった」。自宅のすぐ前が海の坂元信夫さん(67)は地震発生後、避難するために車に乗り込もうとしたところ、金沢から帰省していた孫3人とともに津波に襲われた。

 小学2年の孫は一時、姿が見えなくなった。水の中を必死に探し、小さな手を引っ張り上げた。水位を増す津波から逃れようと3人を抱いて裏手の山を上り、九死に一生を得た。ほかの家族も水に漬かったが、全員無事だった。

 白丸地区は津波の後、大規模火災にも見舞われ、少なくとも10軒が焼け落ちた。坂元さんは5日、青空とともに広がる内浦の海に、つぶやいた。「普段はこんなに穏やかなのに、いまだに信じられん」

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