港散乱、漁師ら落胆 志賀・赤崎で津波4.2メートル

津波で流された網を海から引き上げる漁師=5日午前8時50分、志賀町の赤崎漁港

 東大地震研究所などの推定で津波が高さ4.2メートルまで陸地を駆け上がった志賀町赤崎。漁港の倉庫は壁も窓も破れ、道路には大量の漁網や浮きなどの漁具が散乱していた。「見ての通り壊滅的や。当分は海に出られんわ」。小さな漁村に漁師ら住民の落胆が広がっている。(志賀支局・伊藤聡哉、羽咋総局長・高野淳)

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 1日の最大震度7は志賀町香能で観測した。富来地域の小高い丘である。その麓に位置する赤崎の港は激震、直後に津波に襲われたとみられる。

 漁師の木村守一さん(67)は日没迫る頃、自分の漁船が心配で様子を見に行くと、勢いよく迫り来る波が目に飛び込んできた。「恐怖しかなかった。必死に高台へ車を走らせた」。翌朝、避難所から戻ると、美しい港町の風景は一変していた。

 倉庫は壁もガラス戸もなくなり、柱がむき出しに。漁具が辺り一面に散らばっていた。「津波は初めて。こんなに恐ろしいなんて」と犬山悟志さん(46)。

 集落内には地震で屋根が落ちたり、傾いたりした住宅も多く、川端正澄さん(90)は「あと少し高い津波だったら、赤崎のまちがなくなっていたかもしれん」と声を震わせた。

 5日は6人の漁師が港に集まり、海に流された網を引き上げていた。6日は荒天が予想される。「しけが来る前に終わらせないと、一からやり直しや」と声が飛んだ。いつもならこの時期はブリやヒラメの漁に忙しい。「一日でも早く漁に出たい」。取材中、余震を感じても漁師らの作業する手は止まらなかった。

  ●原発地元の赤住にも

 一方、志賀原発の膝元にある赤住にも津波が襲来した。漁港のそばで民宿を営む60代女性は「お客さんはいなかったので、家族で一目散に高台へ逃げた」。次の日、港の漁網倉庫が泥だらけになっていたが、民宿や住まいに被害はなく、胸をなで下ろしたという。

 別の60代女性は「大きな揺れに続く津波警報に、福島第1原発事故のことが頭をよぎった」と話す。志賀原発は大事に至らなかったが「もし放射能漏れとかがあったら、どんなに混乱したことか」。

 2011年の東日本大震災を契機に、標高11メートルにある志賀原発の前には高さ4メートルの防潮堤が築かれた。「東日本の津波も信じられない光景だったが、今回の地震も同じ。やっぱり原発に二重三重の備えとして防潮堤は必要だ」と民宿の女性は話した。

 津波の被害は羽咋市柴垣町でも確認された。海岸にあるグランピング施設や旧畳製造工場が損傷した。海岸沿いの自転車道路は巨大なアスファルトの塊が転がり、ごみが散乱。伊藤幸雄町会長は「高波を防ぐ3メートルほどの防潮堤を越えて来た。恐ろしいほどの力を感じる」と話した。

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