世界デビューから20年

 「郵政民営化」を前面に押し出して小泉純一郎首相の自民党が圧勝した2005年の衆院選を英国のタイムズ紙はこう報じたそうだ。〈コイズミはスウドクのように勝利した〉-「スウドク」はもちろん、9×9のマス目で遊ぶあの数字のパズル「数独」▲少し補足が必要だろう。東京で数独に出合い、問題の自作を始めるほどのめり込んだマニアが同紙に掲載を持ちかけたのが前年の11月。試しに載せてみると翌年の初めにかけて驚きの大反響を呼んだのだという▲つまり、数独は本格的に世界デビューを果たして今年でちょうど20年。パズル出版社「ニコリ」の創設者で数独の名付け親でもある鍛治真起(かじまき)さんの評伝「すばらしい失敗」から引いた▲晴れの節目をお祝いした…わけではなかったが、4日付の「頭の体操拡大版」にビギナー向けの数独講座を掲載した。整理部・入江渚記者が基本の「き」から解説を試みた力作。早速「初めて解けました!」と、うれしいお電話をいただいた▲鍛治さんの持論は「パズルは非日常空間」。〈解いている間はあれこれ悩みを忘れられて、解き終わったらさっと日常に戻れる〉〈誰かの毎日をちょっとだけ楽しく〉▲“数独の父”は3年前、69歳で亡くなったが、新しい愛好者の誕生を空の上で喜んでくれるに違いない。(智)

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