長崎の男性が羽田衝突の日航機に搭乗 翼に火…死を覚悟した6分間 「まだ現実感ない」

2日午後5時50分ごろ、日航機内から窓外の主翼部分を撮影した写真。エンジン付近から炎が上がっている(男性提供)

 羽田空港で海上保安庁の航空機と着陸直後の日航機が衝突、炎上した2日の事故で、日航機に搭乗していた長崎市の男性(44)が、5日までに同市内で長崎新聞の取材に応じた。機体中央部左寄りの座席におり、衝突から約6分後に機外へ脱出、けがはなかった。「もう死ぬと思った。(機内から)翼に火が見えたので、爆発したら終わりだと思った」とし、乗員乗客が的確に行動して迅速に避難した様子を語った。
 男性は北海道出身。昨年末から実家へ帰省しており、2日の札幌発羽田行き日航516便(乗客367人、乗員12人)に搭乗。羽田から長崎へ乗り継ぐ予定だった。
 男性は事故発生時の様子について「地面に着いた直後に『ガガガッ』といつもと違う衝撃があった。いつもより荒っぽいなという程度の認識だったが、直後にエンジンから火が出ているのが見えて、これはやばいなと思った」と話す。
 機体が停止する直前、座席から機体左側の窓越しに火花が見え、停止後だんだん赤く燃えてきた。他の乗客も異変に気付き「火が出てる」と声が上がった。客室乗務員は「落ち着いてください」「席に着いてください」と肉声で呼びかけていた。声が後方まで届かないと考え、乗務員の言葉を大声で復唱して後ろに伝える乗客もいた。
 焦げ臭いにおいが立ち込め、立ち上がって荷物を取ろうとする人が一部いたが、乗務員は「荷物は置いてください」と指示。自発的に同様の呼びかけをする乗客も。しばらくして「上着を着てください。今から避難します」と指示があった。男性は機体前部左側のシューターで脱出、すぐに機体のそばを離れた。

機外へ脱出後に撮影した機体前部の様子。乗客らが脱出シューターで次々に避難している(男性提供)

 「(機体の停止から)体感的には長かったが、実際は数分だった」と振り返る。脱出後、実家の家族にLINE(ライン)で無事を知らせると「よかった!!」と返信があった。
 機外では機体から100メートル以上離れた場所でいったん待機したが、急に機体のエンジンから異音がして、乗客はくもの子を散らすようにさらに遠くへ逃げた。約1時間後、到着したバスに分乗して屋内へ。日航側が用意したホテルに着いた時は午後11時を回っていた。
 男性は「乗務員の案内は的確で、乗客も指示を周りに伝えたり、外国人の乗客には英語で状況を話したりと自発性があった」と振り返る。今の心境を「まだ現実感がないが、よく助かったなと思う。評論家が『これまで見た中で一番大きな事故だった』と言っているのを聞いた時は本当にぞっとした」と話した。
 事故では日航機の乗客、乗員全員が脱出。海保機の乗員5人が死亡、機長は重傷を負った。

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