「ほしいものは作る」モノづくりの楽しさを受け継ぐバネ製造現場 名古屋の老舗メーカー「共進発条」に潜入

今でも手作業で行われる引きバネのフック起こし

名古屋でバネの製造を行う「共進発条」。創業は1955年です。機械生産となった今でも伝統的な職人技を大事にしており、創業当初からのモノづくりの理念が受け継がれています。今回はそんな同社の取り組みを取材しました。

モノづくりの真髄が詰まったテーパーバネの製造

スプリングマシンで一瞬のうちに作られるテーパーバネ

見せてもらったのは、山型の形を特徴とする「テーパーバネ」の製造ラインです。リモコンなどの電池ボックスに付けられているバネです。その製造は一瞬! 機械から出てきて、あっという間にバネの形になりました。

緻密なプログラム制御がなせる山型

出てきた針金が2つのアームにぶつかって半円を描き、棒が半円を押し出すことで、グルグルとバネの形になって伸びていきます。そして山型を作る決め手となっているのが、徐々に広がるアームの動きです。これによりきれいな山型が作られます。このアームの動きは緻密にプログラミングされているとのこと。

電池を入れるときにむだな隙間が生まれない

テーパーバネは、なぜこうした形をしているのか。山型でないバネ(押しバネなど)は、つぶすと円が重なって厚みが生まれてしまいますが、テーパーバネだとぺったんこ。厚みがなくなるため、電池を入れたときに余計な隙間が生まれずボックスにぴったり収まるのです。

目的をかなえるためのデザインや、製品を作るための製造方法の工夫や調整など、テーパーバネの製造には、日本のモノづくりの真髄が詰まっていました。

共進発条では手作業でのアナログな製造方法を教える

旧石器時代から生活必需品だったバネ

今では暮らしに欠かせなくなったさまざまなバネ。その起源は約2万年前ともいわれています。バネは、元に戻ろうとする力である「弾性」を利用します。狩りに使われていた弓が、弾性を使った最初の道具とされているのです。

機械化が進んでも受け継いでいる伝統的なバネ作り

今では機械で大量生産されていますが、かつてのバネは手作業でひとつひとつ製造されていました。50年以上バネを作り続ける共進発条では、モノづくりの原点を知ってもらうため、今でも研修などで最もアナログな製造方法を教えているそうです。

長谷社長と吉田ディレクターでは雲泥の差

太い棒に針金を巻き付けてバネの形を作ります。「なんだか簡単そう」と見学していた吉田ディレクターも体験させてもらうことに! 慎重に針金を巻いていきますが、力の入れ具合が分からず、均一な幅で作ることができませんでした。長谷社長もこのばね作りを完璧にできるようになるまで、10年ほどかかったのだとか。

今でも生産の一部は手作業

引きバネを職人技で最終の形状に

実は今でも人の手が加わっているバネがあるとのことで、見せてもらいました。引きバネと呼ばれる種類で、両端にあるフックの起こしの工程を手作業で行っています。一番端の円だけを狙って押し倒す作業は、正確さと集中力が試される、まさに職人技です。

事務職で入社をした山次さん。今ではモノづくりに熱中!

作業をしていたのは山次さんです。もともと事務仕事を探していたのだとか。事務職と軽作業の両方で募集をしていた共進発条に入社。入社後はどっぷりバネ作りの楽しさにハマったそうです。今ではほかのバネを見つけて、これよりきれいに作りたいと思うようになるほど、職人魂が芽生えていると話します。

創業からの理念が受け継がれる さまざまなアイデアで商品化も

非接触のニーズに合わせて開発したフック製品

伝統的な手作業も大事にしながら、生活に欠かせないバネを作り続ける共進発条。今ではバネだけでなく、新たな商品も展開しているそうです。例えば音楽記号の1つであるト音記号の形をした商品。コロナ禍を経て生み出されたものです。手を触れずにドアを開けたり、電車の吊り革につかまったりできるアイデア商品です。

あったら良いな! を実現するこんな商品も

かゆいところに手が届くアイデア商品。その名も「君を最後まで愛してる」です。真ん中の輪に使いかけのドレッシングを固定すると容器のドレッシングがポタポタと落ちてきます。ドレッシングを最後まで使い切るための商品でした。

料理が大好きな社長の台所は試作品の宝庫

ほかにも、商品化されていないアイデアグッズがまだまだあるとのことで、長谷社長のお宅を訪問しました。ペットボトルを逆さにして干せるフックに、ざる、まな板など、大きな調理器具を干せるラックもあります。「ほしいものは作る」を実現した、社長のアイデア満載の台所です。

柔軟なバネ作りから新たな商品づくりへ

「お客さんの要望を断らない」を信条に、目的をかなえるため発想豊かにモノづくりを行ってきた共進発条。1955年の創業当時から変わらないモノづくりの“スピリット”が令和の今も継承されているのですね!

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