[社説]県経済展望 回復基調を課題解決に

 沖縄経済はコロナ禍前の勢いを取り戻しつつある。

 主要産業の観光は昨年11月の入域観光客数が68万8千人となり、前年同月比で11.9%増加した。11月としては復帰後4番目に多く、24カ月連続で増えた。

 国内客は昨年、年間観光客数1千万人を達成した2019年の水準を超える月も出ており、今後も堅調に推移するとみられる。

 これを受け沖縄観光コンベンションビューローは、23年の入域観光客数が前年比44.3%増の822万人になるとの当初見通しから上乗せし、824万1500人とした。

 コロナ禍で抑制されていた個人消費も緩やかに増加している。物価高による負担はある一方、イベントが再開してきたことによる消費増加が影響している。

 沖縄振興開発金融公庫の23年10~12月期の県内企業景況調査で全産業の業況判断指数は前期比3ポイント増となった。観光需要や消費が好調なことに加え、公共・民間ともに建設需要が高まっていることが背景にある。

 公庫は19年7~9月期以来の17期ぶりに「県内景況は拡大している」と判断した。

 人流の再開は沖縄経済にプラスの影響が強く、他県と比べても回復の動きは早かった。

 こうした流れを維持するためにもこの機会を、非正規雇用の増加で広がった格差の是正や、低迷する県民所得、産業の偏りなど県内経済の構造的課題の解決に結び付けることが求められる。

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 景気拡大に伴い深刻化しているのは人手不足だ。

 バスやタクシーの運転手不足は社会生活にも影響を与えている。県は、バス会社への補助を始めたが十分とは言えない。

 運転手の時間外労働に上限を課す「2024年問題」も控えており、労働条件の改善など抜本的な対策が必要だ。

 企業は給与の引き上げで人材確保を試みるが、求人の呼びかけにも集まらない状況がある。県内の昨年11月の有効求人倍率は1.11倍で16カ月連続で1倍を超えた。

 一方、月間の有効求人数は31カ月ぶりに減少に転じており、人手不足を理由に事業の縮小が始まっている。

 国際情勢の悪化を背景とした資源高は県内経済も直撃している。

 電気料金値上げを受けた政府の補助は再延長されたものの4月まで。5月からは縮小される。県も5月使用分まで延長したが、その後は不透明だ。県民生活や価格転嫁が進まない中小零細企業への影響が懸念される。

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 県は22年度にスタートした「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」(6次振計)で、「強い経済」の実現を掲げる。厳しい経済環境を乗り切るためには、コロナ前に戻るのではなく新たな沖縄経済モデルをつくることが求められる。

 その際の鍵となるのが「人への投資」である。

 賃上げの継続はもちろんのこと、人材育成や働きやすい環境づくりを加速したい。イノベーションはそうしたところから生まれる。

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