グッドイヤー、1スペックでLMGT3タイヤ供給開始。シーズン後半に“ハード”導入も自由選択制は採らず

 2024年のWEC世界耐久選手権に新設されるLMGT3クラスにタイヤを独占供給するグッドイヤーは、単一のタイヤコンパウンドでシーズンをスタートし、その後、年内に2番目の仕様を導入する予定だ。

 グッドイヤーはすでに、開幕戦から使用される最初のスリックタイヤ・コンパウンドを完成させている。その後、2番目のより硬い仕様が展開され、デグラデーションがより高いサーキットに導入される予定となっているが、チームにはレースウイーク中にコンパウンドを切り替える選択肢は与えられない。

 最初のコンパウンドは『B』スペックと呼ばれ、より硬いコンパウンドは『C』スペックとなる。

 グッドイヤーは2023年までのWEC・LMP2クラスのタイヤ供給において、サステナビリティの観点からスリックタイヤは1スペックのみであらゆるコンディションをカバーしてきた。耐久レースプログラムマネジャーのマイク・マクレガーは昨年、多種多様なマシンへと対応することが求められるLMGT3においても、同様のアプローチを目指すとしていた。その際マクレガーは「最初のスペックでシーズン前半を、次のスペックでシーズン後半をカバーするプランも検討している」と述べていたが、11月に行われたテストを経て、このプランになることが最終決定された形だ。

 グッドイヤーは2023年8月末に最初のLMGT3タイヤの仕様を最終決定し、アストンマーティン、BMW、レクサス、フォード、マクラーレン、アウディを含むいくつかのメーカーが参加したポルティマオでのテストに持ち込んだ。LMGT3に出場するすべてのクルマが、この最終仕様のタイヤをテストしたものと思われる。

「2番目のスペックのスリックは、2024年後半までリリースされないだろう」とマクレガーはSportscar365に語った。

「各トラックに対していずれかのスペックを採用するか我々が選択することに決めたので、ひとつのレースウイークにふたつの仕様を持ち込むことはない。それぞれのレースウイークにおいて、スペックBまたはスペックCを選択する」

 ハイパーカーのサプライヤーであるミシュランは現在、ソフト、ミディアム、ハードの3つのスリックコンパウンドを提供しており、チームはWECのレースイベント中にそのうちふたつを使用する選択肢を持っている。

 マクレガーによると、グッドイヤーはスペックCを導入するレースをまだ特定していないが、6月のル・マン24時間レースの後に導入される予定だという。

「我々はまず(開幕戦の)カタールでレースを戦い、チームがどのような戦略をとっているのかを理解したいと考えている」と彼は語った。

「コースやその種の事情に応じて、左側のタイヤ、あるいは右側のタイヤをダブルスティントで使用するチームの戦略が混在していたことを、GTE時代から見てきた」

「カタールはとても左右の偏りがあるという事実があるので、その傾向の一部がすぐに現れるだろうと我々は考えている」

「2番目の仕様を導入する前に、タイヤのデグラデーションとパフォーマンスがどのようなものなのか、そしてチームがどのような戦略をとり始めているのかを理解しようとしているところだ」

「(Bスペックは)非常に広い作動範囲を持つ。したがって、ル・マンの夜間では非常にうまく機能すると考えている」

「しかし、すでに摂氏40度のCoTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)のようなサーキットで走行し、そのタイヤで良好な走行距離を稼いでいるということは、そのタイヤで極限状態にも対応できるという自信を持ってル・マンに臨むことを意味している」

 2023年11月、グッドイヤーはスペイン南部のモンテブランコで夜間に4時間の休憩を挟み、耐久テストを実施した。

 モンテブランコは、バレンシア、ポルティマオ、エストリル、ポール・リカールとともに、グッドイヤーのテストに使用されたサーキットのひとつだ。

「なかなか激しい時期だったが、その激しさはなかなか収まらない」とマクレガーは認める。

「我々は可能な限り厳しい時間を自分たちに与えるために、タイヤに攻撃的なサーキットでのテストを検討してきた」

「現在は、適切な摩耗率を取得し、チームがタイヤがどのように機能するかを正しく理解できるようにすることに真剣に取り組んでいる。これらのクルマの中には、多くの経験を積んでいるものもあれば、新車もある」

「セットアップがタイヤパッケージに合わせて最適化されていることを理解する必要がある。それが、我々がポルティマオでの大テストにすべてのメーカーを招待することを推進した大きな理由だった」

2023年11月に行われたグッドイヤーのLMGT3タイヤテストの様子

 グッドイヤーは、LMGT3独占入札への申請の一環としてふたつ目のコンパウンドを追加することを提案したうえで、4月に落札した。

「単一の仕様を採用するのではなく、アマチュアドライバーカテゴリーでは、楽しさとパフォーマンスのレベルを維持するために、最初からふたつの仕様を使用することが賢明なアプローチであると考えた」とマクレガーは説明する。

「理論的には、2番目の仕様はより硬い仕様となり、バーレーンのようなより摩耗性の高い路面とより高い滑走エネルギーを持つトラックをターゲットとしている」

「それは本当に大きなターゲットだ。チャンピオンシップが進化し、人々がクルマを理解し、さらにプッシュするにつれて、2番目の仕様を導入できるサーキットでは、2年目には状況が変わるかもしれないと我々は考えている」

■LMGT3用ウエットタイヤは「最終調整中」

 グッドイヤーはまた、レインタイヤの開発にも取り組んでいるが、これはスリックタイヤとは異なる出発点から開発されている。

 ウエットはニュルブルクリンク24時間でのGT3マシンでの同社の取り組みから影響を受けており、一方でスリックはヨーロピアン・ル・マン・シリーズのGTEクラスへの供給から学んだことに基づいて開発されている。

 マクレガーは「ウエットに関しては最終調整を行っているところだ」と語った。

「ウエット路面での安定性とグリップレベルに関しては、気温の変動が予想されるため、ニュルブルクリンクで学んだことをもう少し活用しようと努めてきた」

「これはかねてより進行中の開発プログラムなので、特別に(LMGT3テスト中に)行ったことはない」

「ここ数年、我々は特にGTレースに注目してバックグラウンドでウエットの開発を行ってきた」

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