「王者を追いかけても彼らの前に出ることはできない」とアルピーヌF1。ヒントを得て独自のやり方で進むべきだと語る

 アルピーヌF1のテクニカルディレクターを務めるマット・ハーマンは、チャンピオンシップを制覇したマシンをそのまま真似るだけではレッドブルに勝つチャンスはないと主張している。

 ハーマンは、レッドブルの2023年型マシン『RB19』と他の上位のマシンについて、それらの何が成功に寄与したのか研究しており、主な要素は掴んだと感じているが、そうしたヒントはプロセスの最初のステップに過ぎないと述べている。今年のタイトルを獲得したマシンを調べて何を学んだか尋ねられたハーマンは、「我々はかなり深く理解していると思う」と語った。

「彼らが何をしているのか理解していると考えている。だが結局彼らを追いかけるだけでは、彼らの前に出ることは決してできないだろう。彼らからインスピレーションを得る必要があるということが、我々の信念だ。我々自身のやり方で進まなければならない」

「指を鳴らして一晩でできると想像することはできない。我々は自分たちの方向性について理解しているが、グリッド上の一部のマシンについてもかなり理解していると思う」

「他にも興味深い開発を行っている素晴らしいマシンがある。自分や彼らがしていることを、理解しようとすることが重要だ」

2023年F1第14戦オランダGP 優勝マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位ピエール・ガスリー(アルピーヌ)

 2024年のレギュレーションに変更はないが、各チームはさらなるプレッシャーに直面している。2026年のエンジンルールの大幅な変更に先立って、2025年のマシンも同時に設計しているからだ。そのためには、来年の開発予算とリソースの多くが必要になる。2026年型マシンの空力作業は来年まで開始できないが、今年できるメカニカル面の開発にはそのような制限はない。

「今見ているものからひらめきを得ることはとても重要だ」

「しかしそれをはるかに超える目標を立て、2年にわたる展望を持つ必要がある。重要なことは、周りに見えるマシンのさらにその先を見ることだ。今見られているようなマシンを作ったら、2025年になる頃には相当時代遅れになるだろう」

 ハーマンは、昨シーズンにチームは望んでいたほどのA523の開発を行うことができず、順位を下げることになってしまったと語った。

「シャシーといわゆるサスペンションキャリア、もしくはメインケースに、ボリュームの点でいくつか問題があった。IPの点で他のマシンにあるものだけではなく、我々独自のアイデアや開発についてもだ」

「そのため多少の制限があった。シーズン後半にフロアのアップデートを予定していたが、結局投入しないことになった。その代わり来年のマシンにそのパフォーマンスを組み込んだ」

「そこから実際にフルパフォーマンスを発揮するにはもう少しボリュームが必要だったが、あのマシンにはそれがなかった」

 しかしハーマンは、A523には「いくつか素晴らしい部分」があったとも述べた。

「そうしたことについては謙虚になろうとしている。我々は望む位置に達していないことをわかっているし、何を向上させる必要があるのかということについて話をしたい。自分たちがうまくやったかもしれないことを見せびらかすよりも、もっとうまくやる必要があることに集中したい」

2023年F1第20戦メキシコシティGP ピエール・ガスリー(アルピーヌ)

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