負傷なんの サイド切り裂く/山田高MF川原

準決勝で相手と競り合う青森山田のMF川原(右)=6日、国立競技場

 左サイドでボールを持つと、脚の痛みを忘れて果敢に仕掛けた。6日の全国高校サッカー選手権準決勝で先発出場したMF川原良介(3年、埼玉県出身)は、負傷の影響を感じさせないプレーで先制点を呼び込んだ。8日の決勝戦でも、持ち前のドリブル突破でサイドを切り裂くつもりだ。

 4日の準々決勝。相手との競り合いで左太ももを痛め、前半27分でピッチを去った。翌日は別メニューで練習し、スプリントを数本こなしただけ。その後、トレーナーと状態を入念に確認し、正木昌宣監督は「いける」と判断、準決勝の先発に名を連ねた。太ももにテーピングを施し「力をセーブ」(川原)しながらも鋭い突破を見せ、前半10分、先制点につながるコーナーキックを獲得した。

 小学1年でサッカーを始めてから「ずっとドリブルが大好きだった」。相手をさっそうと抜き去るのが楽しくて、練習ではDFとの1対1を繰り返した。巧みな足技に加え、中学時代に地元・東松山市の陸上大会の1500メートル競技で入賞したほどの走力も併せ持つ。

 中学卒業時、Jリーグの下部組織や強豪高校など10チーム以上から声がかかった。その中から、MF松木玖生(J1FC東京)やDF藤原優大(J1浦和、2024年シーズンからJ2大分)らを擁し、選手権で準優勝した青森山田の選手を見て「自分に足りない体の『ごつさ』がある」と同校を選んだ。

 昨季から出場機会を得て、今季は右サイドの杉本英誉(3年、岐阜県出身)とともに不動のサイドMFに成長し、攻撃の中心を担う。チームが劣勢時でも個人技で局面を打開し、得点に結びつけてきた。

 青森山田は第97回大会のバスケス・バイロン(J1町田)、檀崎竜孔(豪州1部ウエスタンU)、第100回の藤森颯太(むつ市出身、明治大)、田澤夢積(青森市出身、新潟医療福祉大)など、優勝した世代ではいずれも強力なサイドアタッカーが存在感を放った。川原も「サイドが強い代は優勝している」と自身にかかる期待を受け止める。

 7日の練習では全てのメニューを元気にこなし「痛みはなくなってきた」と笑顔を見せた川原。「気持ちで戦って、最後の試合は笑って終わりたい」。決勝でもサイドを制圧し、偉大な先輩に肩を並べることを誓った。

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