[社説]安倍派 池田議員逮捕 事態は最悪かつ深刻だ

 自民党安倍派のパーティー券を巡る「政治とカネ」の問題は、現職国会議員の刑事責任が問われる事態に発展した。腐敗の根を絶つためにも、その病巣に徹底的にメスを入れなければならない。

 東京地検特捜部が、政治資金規正法違反の疑いで、安倍派の池田佳隆衆院議員と政策秘書を逮捕した。

 2018年からの5年間で派閥から4800万円余りの還流を受けていたにもかかわらず、政治資金収支報告書に記載せず、裏金にした疑いが持たれている。

 規正法は政治団体の会計責任者に収支報告書の提出義務を課している。議員も不記載などの詳細を把握していれば、会計責任者と共謀したとして罪に問われる。

 特捜部は池田容疑者が収支報告書の作成を担っていた政策秘書との共謀があったと判断した。

 比例東海ブロック選出の池田容疑者は、「安倍チルドレン」の一人だ。

 15年に、沖縄の2紙を含む報道機関への圧力を求める発言が問題となった自民党勉強会のメンバーでもあった。18年には、安倍政権に批判的な前川喜平・元文科事務次官が中学校で行った授業内容を同省に照会していたことが問題化した。

 還流発覚後、池田容疑者の資金管理団体は還流分を派閥からの寄付とし、収支報告書を訂正している。

 多額の訂正である。もちろん単純な記載ミスではないのだから訂正で済む話でもない。裏金の使途を含め、徹底した捜査が求められる。 

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 安倍派を舞台にした裏金づくりは長年の慣行で組織的だったとされる。

 同派99人の大半は派閥からパーティー券の販売ノルマ超過分の還流を受けており、その額は5年間で5億円ほどに上る。これとは別に、議員が派閥に納めず、手元でプールしていたものが約8千万円あることも分かっている。

 年の瀬、特捜部は永田町の議員会館事務所に異例の強制捜査に入った。池田容疑者に続き捜索したのが大野泰正参院議員の部屋だった。大野氏は5千万円超の還流を受け裏金にしたとされる。

 情けないのは、疑惑発覚後、国会を欠席するなどして両者とも説明責任を果たしていないことだ。

 説明から逃げるのは、裏金疑惑を受け閣僚や党幹部を辞任した安倍派「5人組」も同様である。

 幹部の関与も含めて裏金づくりの全容を解明し、適正な刑事処分をすることが不可欠だ。

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 自民党は池田容疑者を除名処分としたが、1議員の除名で終わる問題ではない。

 本来、安倍派を解体し、内閣は総辞職し、一から出直さなければならないほど深刻な事態である。

 しかし岸田文雄首相からはうみを出し切ろうとの決意が感じられない。危機感が伝わってこないのだ。

 政治資金規正法の抜本的見直しが必要なのはその通りだが、自民党には任せられない。第三者機関を設置し市民目線で進める必要がある。

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