三味線好きな交番のお巡りさん…実は世界大会の覇者 福井県警の21歳、地元で評判「警察と三味線の二刀流でかっこいい」

児童に津軽三味線の腕前を披露する佐藤巡査=福井県の越前町糸生小学校

 高校時代に津軽三味線の世界大会を制した経験のある若手巡査が、福井県越前町の鯖江署糸生駐在所で勤務している。地元糸生小学校でこのほど開いた防犯教室では、自慢の三味線演奏を織り交ぜ、児童や地域住民をとりこにした。唯一無二の特技を生かし「住民に元気と安心を与えたい」と奮闘している。

 異色の経歴を持つこの警察官は佐藤領哉巡査(21)。昨春、糸生駐在所に赴任した。物腰柔らかで、地元では「三味線を弾く駐在さん」としてすっかり知られた存在だ。

 青森県にルーツを持ち、祖父と父も津軽三味線奏者。福井市で育ち、物心つく前から三味線の英才教育を受けた。めきめき腕を上げ、北陸高校の生徒のときには世界大会の部門別で2年連続優勝を果たした。

 高みを目指す一方で、少しのミスも許さない楽器との向き合い方に疲れも感じていた。進路選択の時期に新型コロナウイルス禍が重なり、「自分がやりたいことは何か」と自問した。

 「プロとしてお金を稼ぐより、多くの人に気軽に演奏を聴いてほしい」。そんな思いに、人に寄り添う警察官の仕事への幼少期からの憧れが重なった。

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 高校卒業後、警察学校へ進み、初任地の敦賀署では交番勤務の一環として、老人会などで演奏を重ねた。折り紙付きの腕前は評判を呼び、度々声が掛かるように。三味線を通じ住民と親交を深め、「自分のやりたかったことに近づけている」と自信を深めた。

 糸生駐在所でも、津軽三味線の話題は“名刺代わり”に効果てきめん。12月21日には糸生小で防犯教室を開き、即興でジングルベルやポップスを披露。児童に「冬休みは駐車場での事故に気をつけて」と呼びかけることも忘れず、大盛況で幕を閉じた。6年生の女児は「警察と三味線の二刀流でかっこいい。これからも糸生を守ってほしい」と目を輝かせた。

 警察音楽隊にも所属し、クラリネットの腕も磨く佐藤巡査。三味線と勝手は違うが「表現の仕方は個人の自由という点は同じ。経験は生きている」という。

 糸生は「人柄が優しい地域」。下校中の児童が敬礼してくれる瞬間が何よりの幸せだ。「駐在所の存在を身近に感じてほしい。声が掛かればぜひ演奏にも出向きたい」とはにかんでいた。

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