社説:成人の日 社会の課題を「自分ごと」に

 全国でおよそ106万人の18歳が、きょう「成人の日」を迎えた。前年から6万人減り、過去最少を更新した。全人口に占める割合は1%に満たない。社会の支え手が減る日本を象徴する断面といえよう。

 式典を開く市町村の大半は20歳を対象とする。京都は約2万7千人、滋賀は約1万5千人。久々の再会は楽しみだろう。

 18歳以上を「成人」とする改正民法の施行から2年近くになる。節目の日を、社会の変化に目を向ける機会にしてほしい。

 成人年齢の引き下げで親権の対象から外れ、金銭が絡む契約関連のトラブルの増加が懸念された。国の機関に寄せられた18、19歳からの契約を巡る相談は、法施行後も件数が大きく変わらないものの、美容や出会い系、副業などに関する相談が上位にあるという。

 統計には表れないが、女性客を狙う「悪質ホスト」問題は若者の被害者が多く、高額なツケの支払いのためローンを強いられるケースもあるとされる。SNSの偽情報を含め、一層の注意が必要だ。

 性同一性障害の人が性別変更の審判を受けられる年齢も18歳以上となった。昨年は最高裁が手術要件の規定を違憲とする判断を初めて示したが、多様性を認める社会への理解はまだ十分ではない。

 社会的な少数者や生きづらさを抱える人々を「自分ごと」ととらえる意識を持ちたい。

 家庭で祖父母やきょうだいの世話をする「ヤングケアラー」は、小中学校や高校でクラスに1~2人いることが近年の調査で明らかになった。

 親の信仰を強制されて多額の寄付や虐待に苦しむ「宗教2世」問題では、救済に向けた法整備につながった。

 元自衛官の女性に対するセクハラや芸能界での性加害問題など、告発によって真相が究明された事件も相次いでいる。一部の組織や業界の悪弊と見過ごしてはならない。

 社会を変えるために声を上げる大切な方法の一つが、政治に民意を反映させる選挙である。

 2016年に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたが、10代、20代の投票率は他の世代より低く、国政選挙でも30~40%台という状況が続く。

 投票率が低い世代は、年齢が上がってもその傾向が変わらないとの研究もあり、今の流れのままでは民主主義の土台が揺らぎかねない。

 国は少子化対策に力を入れ、妊娠や出産、教育などにかかる費用を軽減する方針を掲げる。

 だが、財源をあいまいにして負担を先送りする姿勢が顕著だ。次世代へのツケを増やし続ける政治を、新成人はどうみているのだろうか。

 それを示す上でも1票の行使は重い意味を持つ。積極的に社会に関わってもらいたい。

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