30年熟成…火災での焼失免れた奇跡の日本酒 佐伯市の大地酒造が「瑞鳳」発売【大分県】

30年熟成された日本酒「瑞鳳」を発売した大地酒造の池田敬社長(左)と大地正一会長=佐伯市の大地酒造船頭町醸造所
奇跡的に焼失を免れたホーロータンク。中には酒が良い状態で保存されていた

 【佐伯】佐伯市上浦の大地酒造(池田敬社長)は、30年間、熟成された日本酒「瑞鳳(ずいほう)」を発売した。蔵が全焼する火災を生き残った酒を偶然発見し、長い眠りから呼び覚ました。琥珀(こはく)色で、メープルシロップのような芳醇(ほうじゅん)な香りとまろやかな味わい。「年月を積み重ねた特別な酒をぜひ味わってほしい」と呼びかけている。

 大地酒造は市内船頭町で1885年に創業した老舗。後継者がいなかった5代目の大地正一さん(73)=現会長=は廃業を考えていたが、市内上浦で酒店を営む池田社長(62)が「伝統の日本酒を後世に残したい」と申し出て2019年に事業を引き継いだ。

 就任したばかりの池田社長が蔵の中を調べている時、1基の古いホーロータンクを見つけた。大地会長に尋ねると、1995年1月に起きた火災で奇跡的に焼失を免れたものだという。中には数年前に仕込んだ酒が良い状態で保存されていた。

 日本酒は変化しやすく、熟成といっても通常は1、2年で出荷する。「これほどの長期熟成は珍しく、味も申し分なかった」と池田社長。かつて同酒造で造っていた銘柄「瑞鳳」の名を冠し、商品化することを決めた。

 大地会長が祖父から聞いた話によると、瑞鳳と名付けられたのは太平洋戦争の直前。真珠湾攻撃関連の作戦で海軍空母・瑞鳳が佐伯に寄港した際、艦長が同酒造の酒を気に入り、艦名を使うよう勧めたという。

 池田社長は「事業を受け継いだ結果、この酒に出合い、銘柄と共に復活させることができた。大地酒造の歴史を感じてもらいたい」と話した。

 500ミリリットル入りで、税込み1万1千円。初回販売は700本。県内の酒店から注文できる他、同酒造のホームページでも購入できる。

© 有限会社大分合同新聞社