金沢市内を中心に教室を展開する進学塾「スタディハウス」は9日までに、能登半島地震で被災した高校3年生を無償で受け入れる取り組みを始めた。13、14日の大学入学共通テストに向け、個別に指導する。宿泊部屋をホテルに確保し、宿泊費や弁当代も負担する。能登から避難してきた受験生は、周囲の支えに感謝しながら本番でベストを尽くそうと勉強に追い込みをかけている。
既に輪島、七尾、鵬学園高の受験生20人以上を受け入れた。部屋は金沢国際ホテルに18人分、ホテル日航金沢に20人分を確保し、1日3食の弁当を配布している。生徒に個別に指導するほか、大手予備校の講師に24時間体制で質問できるシステムも提供する。
金沢高尾台校では9日、能登の受験生たちが黙々と机に向かっていた。「金沢は余震の規模が小さく、静かに勉強できる。トイレから水が出て感動した」。七尾高3年の亀允斗(まさと)さん(17)=穴水町=はしみじみと語った。
亀さんは母の実家がある志賀町で被災し、同町内の宿泊施設に身を寄せた。紙もペンも持たず、友人からメールで届いた問題の写真20~30枚を眺めて勉強した。穴水の自宅に戻っても日常生活がままならず、不安な日々を過ごした。
亀さんは「勉強できる喜び、幸せをあらためて感じた」と振り返り、第1志望の筑波大合格へ「自分がやってきたことを信じて精いっぱいやってみる」と前を向いた。
鵬学園高3年の永源旭(えいげんあさひ)さん(18)=中能登町=は「親や担任教師、塾に感謝しかない」と話した。共通テストに向けて「厳しい状況だけど、支えてくれる人に恩返しできる結果を出したい」と意気込んだ。
支援物資を届けるため6日に輪島市を訪れた辰村和俊塾長(53)は「報道の100倍ひどい。数カ月間は学校は再開しない」と痛感しており、私大、国公立大試験に向けてホームステイ、ホテル宿泊も検討する。
「後ろ髪を引かれる思いでも、今はぐっと我慢して力をためろ。君たちが4、5年後の石川の復興の中心になるんや」。辰村塾長は受験生にこう呼び掛けている。