【早出し】能登半島地震、DMAT拠点で本県チーム奮闘 「災害医療は情報戦」

福祉施設に関する情報収集の指揮を執る日本海総合病院救命救急センターの緑川新一診療部長(左)=9日午前11時21分、石川県七尾市・公立能登総合病院

 山形新聞の能登半島地震取材班は9日、甚大な被害を受けた石川県で、能登半島中央部・七尾市にある公立能登総合病院の災害派遣医療チーム(DMAT)活動拠点本部を取材した。災害医療は情報が命とされる。その情報収集と調整を図り、DMAT活動の指揮命令の中枢となる本部で、本県のチームが活躍している。

 能登半島の地域医療の中核を担っている同病院は、激しい揺れで壁にひびが入っていた。施設は被害を受けたが、半島のほぼ中央に位置していることなどもあり、全国から参集するDMATの拠点が置かれた。

 現在、本部に派遣されている本県のDMATは日本海総合病院(酒田市)の救命救急センター診療部長・緑川新一医師(53)と看護師、業務調整員の計5人。本部に詰め、司令塔の役割を担っている。本部は現場指揮や道路情報収集などの班が編成されており、日本海総合病院のメンバーは福祉施設情報収集班で活動。緑川医師は7日から班のリーダーを務めている。

 大きな能登半島の地図に、福祉施設名が書かれた付せんが張られ、通行できない道路も記されていた。5人は地図を囲み、他のDMATのメンバーと調整を図る。通常の医療提供体制が維持できなくなり、早急に医療支援が必要なケースの把握や優先順位などを決めるため、福祉施設の入所者数などを集約し、地図に落とし、対応できる最寄りの病院があるのかも確認する。これが同班の役割だ。

 「災害医療は情報戦。たくさんのDMATが集結し、すぐに現場に出ても、思ったような動きはできず、成果は得にくい」と緑川医師は強調する。本部で情報の収集と整理、関係機関との連携も図った上で現場活動を展開しなければ、多くの命は救えないという。

 ただ、今回の震災ではあまりにも情報が少ないと、多くの医療関係者が指摘する。半島特有の交通アクセスの難しさに積雪が重なり、救援や情報収集が妨げられている。本部がある七尾市も被害は大きいが、輪島市や珠洲市がある北部の「奥能登」の被害状況はさらに深刻だ。「福祉施設で発災後、暖房が使えず、ひたすら耐えていたということが、1週間以上過ぎてから分かったケースもある。とにかく今回は情報が少な過ぎる」と緑川医師は語った。

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