ヤングケアラーの日常を映画に 当事者へ取材しリアルを追求 「身近な問題だと知ってほしい」

主人公を演じた盧礼欧さん(中央)と撮影スタッフ=2023年8月、与那原町内(仲村雅国さん提供)

 自主製作で映画を撮り続けている仲村雅国さん(51)が、ヤングケアラーをテーマにした作品を手がけている。障がいのある弟の介護や家事を担う高校生の日常と、福祉とつながり希望を見いだす様子を描く。フィクションだが、当事者ともやりとりして作り上げる「うそのない作品」。3月に完成予定で、学校や地域での上映を通して「ヤングケアラーが身近な問題だと知ってもらえたら」と話している。(学芸部・嘉数よしの)

 仲村さんは2008年から、いじめや不登校など子どもを取り巻く社会問題をテーマにした映画を製作してきた。脚本や監督、プロデュースなどで関わった作品は10作を超える。

 11年に大津市の中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺した時は「ショックが大きかった」。子どもたちが自分たちでいじめを表現する映画製作をサポートした。

 19年には不登校の子がさまざまな葛藤を乗り越え、目標に向かって歩き始める実話を基にした「Challenged(チャレンジド)~ある不登校の物語~」が完成。「島ぜんぶでおーきな祭 第11回沖縄国際映画祭」で上映された。

 ヤングケアラーをテーマにしたのは、難病の母親を介護する福岡県の男子高校生との出会いがきっかけだ。「家族だから介護は当然だけどきつい」「野球をやりたかった」といった胸の内を明るく話す姿が心に響いたという。

 県内の当事者や研究者に取材し、経済的な厳しさやきょうだいのケアをすることが多いという沖縄の子ども・若者が抱えがちな背景を踏まえ、脚本を仕上げた。家庭の状況やニーズがさまざまなため、「ヤングケアラーは解決が難しい。脚本執筆も今までで一番苦労した」と振り返る。

 友人や知人ら有志が出演者やスタッフとして協力し、昨年8月に県内各地で撮影した。フィクションながら、リアリティーを追求し30分にまとめた。

 昨年からNPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい(金城隆一代表理事)で勤める仲村さんは、不登校やひきこもりを経験した若者らにも声をかけ、製作に加わってもらった。

 ちゅらゆいが運営する居場所kukulu(ククル、那覇市)に通う19歳の男性は、カメラアシスタントで参加。「楽しくて、こんな仕事をやりたいと思った」と話した。

 現在編集作業中の同作は、「Challenged-ひとりぼっちのエール」(仮)と題して3月に完成する見込み。試写会では当事者から評価されたといい、「自信になった。多くの人に見てもらいたい」と呼びかける。

 撮影に協力した中学校に教材として贈るほか、「県内外で上映していけたら」と上映先を探している。

 問い合わせは縁技Edutainment、メールengienterteinment@gmail.com

ヤングケアラーをテーマにした映画への思いを語る仲村雅国さん=2023年12月、那覇市・kukulu

© 株式会社沖縄タイムス社