社説:能登半島地震 関連死の防止に全力を

 「助かった命」を守ることに全力をあげたい。

 石川県の能登半島で最大震度7を観測した地震発生から10日になる。

 半島各所で土砂崩れや家屋の倒壊などが多発し、被害の全容はいまだ把握されず、捜索や支援が全域に届いていない。

 死者は9日夕までに200人を超え、地震の直接の死者数としては東日本大震災後、最大の被害になった。安否不明者も約100人とされる。

 道路の陥没や崖崩れで陸路が寸断され、津波で港も損傷した。もともと交通の便が良いとはいえない地域を襲った地震は、支援や復旧工事に向けた物資や人の輸送をいっそう難しくしている。

 被災者は寒さの中で疲労を募らせている。避難所生活では低体温症や感染症が懸念される。新型コロナウイルスやインフルエンザの感染が確認されており、まん延が心配される。

 深刻なのは、トイレなどの衛生環境対策が追いついていないことだ。断水が続き、し尿処理施設も多くが稼働停止している。対応を急いでほしい。

 2016年4月の熊本地震では、死者276人のうち8割が、避難所などで体調を崩したことが原因の災害関連死だった。

 避難所生活の疲労から心の健康を失った人や、車中泊でエコノミークラス症候群になり、命を落とした例も報告されている。繰り返してはならない。メンタルも含めた医療分野の支援を早期に充実させたい。

 関連死を防ぐためにも、ホテルなどへの2次避難を進めるべきだ。石川県は、被災者を地域ごとに都市部の宿泊施設に移す準備に入った。民間の賃貸住宅を自治体が借りて提供する「みなし仮設住宅」の開設も急がれる。

 被災地では今後、住宅の危険度判定や、り災証明の発行などにマンパワーが求められるが、自治体の職員も多くが被災者だ。職員の応援派遣を息長く続ける必要がある。

 一方、一般のボランティアの受け入れ態勢は整っていない被災地が多い。現地の負担とならぬよう、ニーズに即して支えることが大切だ。

 自然の力は常に想定を超える。そんな当たり前のことを今回の地震はあらためて見せつけた。京滋でも同様の事態は起きうる。

 住宅の耐震化を急ぐのはもちろん、被災者になった場合に、どう支え合い、生き延びるかを、それぞれで考え、用意しておきたい。

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