顔料やオイル、石油系のロウを混ぜて作るクレヨンですが、名古屋に一風変わった材料でクレヨンを作り、異例の大ヒットを記録した工場があるのをご存知でしょうか。その名は「東一文具工業所」です。小さな工場でありながら、飛ぶように売れるクレヨンを生み出す製造現場に密着します。
異例の大ヒットを生み出した「東一文具工業所」の工場へ潜入
名古屋市南区の住宅街の一角に位置する「東一文具工業所」。本社は社長の弟さんの自宅を兼ねていて、訪れてみると工場らしからぬ見た目です。社長の水谷正幸さんいわく「クレヨン製造業はとても珍しい業種で、東海三県では東一文具工業所だけではないか?」とのこと。
そんな東一文具工業所ですが、業界の常識を覆すクレヨンを製造しています。それが「とういちクレヨン」。価格はなんと2420円とお高め! 高級なクレヨンなのですが、年間2万セットを販売する異例の大ヒット商品です。このクレヨンがなぜ飛ぶように売れるのか秘密を探ります。
支持される理由は、練り顔料に入れられる天然もののラード
案内してもらったのは、練り顔料(クレヨンの元となる顔料)を作る製造現場です。ずらりとクレヨンの元となる顔料が並んでいます。黄土色の顔料は主に鉄、白は主にチタンなど、顔料といっても様々な材料からできており、ピンクといった中間色は混ぜ合わせて作るのが特徴です。
「とういちクレヨン」の大きな秘密は顔料にあります。クレヨンの書き心地を良くするために、一般的には石油系のオイルを使うのですが、東一文具工業所ではラード(豚の油)を使っているのです。
原材料に天然のものを使用しているため、万が一、子どもが口に入れてしまっても安心! この点が大きく支持されている理由の1つです。ここで練り顔料が作られ、次の工程で劇的に見た目を変えていきます。
材料だけじゃない 使い心地にも配慮した製造工程
先ほどの練り顔料をローラーに流し込むと、瞬く間にローラーの一面がピンク色になってしまいました。そして練り顔料が、どんどんローラーに巻き込まれていきます。
ダマになっている顔料の粒を、ローラーで引き伸ばして細かく砕きます。よく見ると、出口から出てきた練り顔料が滑らかになっています。
そして、滑らかにした練り顔料に粒が残っていないか測定器でチェック。このチェックを怠ると、赤や白の粒が残ってしまいクレヨンで書いたときに色むらが出てしまうんです。
使って安心! そして使い心地が良い「とういちクレヨン」。配慮と手間を惜しまないからこそ、東一文具工業所のクレヨンが支持され続けるのですね。