岩手県陸前高田市で「北限のゆず」のブランド化が進んでいる。今季の収量は過去最多の12トンに達し、香りの強さを特長に大手酒類メーカーなど県内外から引き合いがある。東日本大震災の津波をかぶって、なお実をつけたことから「復興のシンボル」とされる。11日で震災から12年10カ月。生産者は能登半島地震に当時を重ねつつ、復興へと歩む地域の姿が「少しでも被災者の希望になれば」と願っている。
北限のゆずは、温暖な気仙地域で潮風を浴びて育ち、香り高いのが特長だ。200年以上前から民家の庭先に植えて自家消費してきたが、津波にも負けない力強さに感銘を受けた地元有志が2013年に「北限のゆず研究会」を結成。栽培の北限という希少性を生かして同年に商標登録し、ユズの木を植えるなどブランド化を進めてきた。
現在は約180人が生産し、県内外に出荷する。宝酒造(京都市)の東北限定酎ハイや南部美人(二戸市)のゆず酒など酒類メーカーに加え、飲食店の引き合いもある。陸前高田市高田町の「東京屋カフェ」でクリームパスタに使う小笠原修店主(62)は「他産地のユズに比べて香りが深く、程よいアクセントになる」と太鼓判を押す。