【解説】有料化も?SAで大型車の駐車「1時間まで」の実証実験 2024年問題にも影響か 運送会社からは困惑の声

インターネットで買い物する人が増えるなどし、物流が活発になる中、今、サービスエリアでの大型車の駐車スペースが足りないことが問題となっています。スペース不足を解消するため、吉備サービスエリアでは、利用時間を最大1時間に制限する実証実験が行われています。

吉備SAで利用時間を最大1時間に制限する実証実験

(松木梨菜リポート)
「成人の日の祝日ということで、サービスエリアは家族づれなどでにぎわっています。一般車だけではなくて、大型車も複数台止まっています」

山陽自動車道の上り、吉備サービスエリアでは、大型車の駐車スペース121台のうち、5台分を最大1時間の利用に限定する実証実験が2023年12月22日に始まりました。

この実証実験は、高速道路各社と有識者らでつくる検討会が全国11のサービスエリアで順次始めているものです。

(ネクスコ西日本中国支社 交通計画課/吉川貴信 課長代理)
「平日の夜間帯に大型車が混雑している状況が見受けられます。止めようとしても満杯で、次のSAに行くような車両が見受けられますので、そういう車両を1台でも多く救いたいなというところで」

サービスエリア・パーキングエリアの駐車スペースが混雑する背景には「ドライバーの休憩時間の確保」があります。

(トラックドライバーは―)
「何時間運転したら何時間運転できないっていうのがあるので」
「サービスエリア内で休憩しないといけない感じで。大型が止められるようなコンビニがあるみたいですけど、近隣住民の方に騒音があったりするらしいので」

国の基準で、トラックドライバーは4時間ごとに30分以上、24時間のうち連続して8時間以上休息をとるよう求められています。

長距離ドライバーの場合、この休息をサービスエリアなどで取るケースが多く、駐車スペースが長時間空かない要因になっています。

ネクスコ西日本は、これまでも駐車スペースの確保を図ってきました。吉備サービスエリアでは、2018年に大型車の駐車スペースを38台分増やしました。

これは、ピーク時の駐車台数に合わせた対応でした。しかし、インターネットで買い物をする人が増えたことに伴い、全体の物流量が増加。結果、トラックの行き来が活発になり、駐車スペースの混雑もより深刻になっています。

駐車スペース不足は2024年問題にも影響か

さらに……。

(松木梨菜リポート)
「駐車スペース不足は、2024年問題にも影響するのではないかと懸念されています」

「働き方改革関連法」によって2024年4月からはドライバーの労働時間の規制が厳しくなります。

24時間のうちに連続して取らなければいけない休息時間は、これまでの「8時間以上」から「9時間以上」と長くなります。

これによって、駐車スペースが空かない……という状況がより深刻になることが懸念されます。

今回の実証実験は、時間を制限して回転率が高いスペースを作ることで、短時間の休息が取りやすい状況を作ろうとしています。

(ネクスコ西日本中国支社 交通計画課/吉川貴信 課長代理)
「利用状況アンケート調査等を行い、休憩機会の変化、周辺施設を含めた混雑状況、効果的な整備位置を検証していきたい」

紹介した実証実験は、吉備サービスエリアも含めて全国11のサービスエリアが対象です。今後は、AIカメラによって駐車時間を把握するシステムの導入なども検討されています。

実証実験を行っている検討会は、半年から1年ほどかけて効果を検証するとしています。

その上で、大型車について、一定時間以上の利用を「有料化」することも検討しているということです。

規制強化に輸送コスト増加…運送会社からは困惑の声

労働時間の規制強化に加えて、輸送コストの増加につながるかもしれない状況に、運送会社からは困惑の声も上がっています。

(新光運輸/畝木孝浩 常務)
「今までたとえば10人で運べていたものを、労働時間短くすると12人いるとかということは、企業にとっても減収ですし。今の現状でコストだけ上がるのは、企業経営の中では難しい」

岡山市東区にある「新光運輸」は、主に名古屋方面に自動車部品などを運んでいて、40人ほどのドライバーを雇用しています。2024年問題の対応策として、輸送の「時短」に取り組んできました。

(新光運輸/畝木孝浩 常務)
「時間をお金で買うということで、高速道路の利用率も上げて、今まで一般道で輸送していた経路を高速道に乗り換えて」

例えば、岡山ー名古屋間の輸送の場合、これまでは一般道を中心に使っていて往復18時間ほどかかっていました。現在は高速道路中心に切り替えていて、往復12時間ほどと約6時間、輸送時間を短縮しました。

一方、交通費はこれまでの7000円程度から2万3000円程度と、約3倍に膨らみました。

(新光運輸/畝木孝浩 常務)
「早く荷物を届けるというのと、(ドライバーに)十分な休息を1回で与えて確保してほしいというのがあって。ドライバーにとってはプラスと、会社にとってはマイナスということになりますね」

新光運輸は、注文を受けている荷主側に交通費の負担を依頼しましたが、交渉は進んでいないということです。

業界では、交通費の増加分を運送会社側が負担しているケースが多いということです。

新光運輸は、これまで業界で行われていた価格競争の流れを見直さない限り、物流を維持できないと訴えています。

(新光運輸/畝木孝浩 常務)
「『最低運賃』っていうのが法律で決まると、ある程度の企業は守られると思うんですよね。ドライバー不足もギリギリのラインで守れて、物資が届かないとか商品が届かないというのは抑えられるかなと」

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