〈1.1大震災〉富山の酒造り守る 土蔵崩落、断水、杜氏被災…乗り越えて仕込み再開

酒造りに取り組む清都社長(左)と蔵人=高岡市京町

  ●高岡「勝駒」の蔵も懸命

 能登半島地震で被災した富山県内の酒蔵が本格復旧に向けて動き出した。全国で人気が高い名酒「勝駒」を醸造する高岡市京町の清都酒造場は、崩落した土蔵の壁の補修を終え、11日までに仕込み作業を再開。氷見市や南砺市の酒造業者も断水や杜氏(とうじ)の被災といった困難に直面しながらも、酒造りの伝統を守ろうと尽力している。

 清都酒造場では、築約120年の土蔵の外壁が一部崩落し、水道管も破損。仕込みを中断し、土蔵の補修や、ほこりをかぶった作業道具の洗浄、消毒に約1週間かけ、9日に作業を再開した。

 本来なら既に新酒の瓶詰め時期を迎え、1月中旬ごろには出荷しているが、ペースは遅れ、まだ仕込みの段階だ。清都浩平社長(43)は「再開できるだけでもありがたい。早く本来のペースに戻し、新酒を待っている人に届けたい」と強調した。今季も例年並みの出荷量を確保できるよう手を尽くす。

  ●同業者が給水応援 氷見・髙澤酒造場

 氷見市唯一の酒蔵で、1872(明治5)年創業の髙澤酒造場(同市北大町)は土蔵2棟などが被害を受け、仕込みを中断した。断水で酒造りに必要な水は十分に確保できていない。それでも、髙澤龍一社長は「多くの人に応援してもらっている。前を向いていくしかない」と来月上旬の再開を目指す。

 発災した1日、髙澤社長は大吟醸の仕込み準備をしている最中に揺れに襲われた。安全のため蔵から離れたが、タンクの酒はこぼれ、酒瓶の多くも割れた。仕込み蔵は傾いて土壁が崩落。米を保管する土蔵も基礎から沈下した。

 髙澤社長はショックを受けながらも、2日から再開に動き、少しずつ準備作業に取り組む。富山県内の同業者から給水を受け、取り引きのある酒販店からも応援の注文が入っているのが励みになっている。

  ●能登杜氏の無事確認

 1889(明治22)年創業の若駒酒造場(南砺市井波)では、珠洲市の80代の能登杜氏が被災して一時連絡が取れなくなった。4日に本人から、滑川市の息子家族の家に避難して無事との連絡があり、仕込み作業は当初から5日遅れの12日に再開できる見通しとなった。清都英雄専務(53)は「何よりも杜氏が無事でほっとした」と話した。

 富山県酒造組合などによると、11日時点で、加盟する全19蔵のうち二つの蔵で仕込みができない状態という。組合では富山、石川で被害を受けた酒蔵や関係者を支援する義援金を募っており、いち早い復旧を目指す。

 桝田隆一郎会長は「昔、富山の酒蔵の半分は能登の杜氏が酒造りを担っていた。富山の酒蔵はもちろんだが、富山の酒造りに深い関係がある石川の酒蔵も富山から応援したい」と力を込めた。

仕込み再開に意欲を見せる髙澤社長=氷見市北大町

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