〈1.1大震災~連載ルポ〉船凍イカ180トン漁師が守る 「溶けたら売り物にならん」

冷凍イカを漁船から下ろす漁師=11日午前10時、能登町の小木港

  ●冷凍庫復旧まで船番24時間態勢

 能登町・小木港の特産といえば凍らせたスルメイカ「船凍(せんとう)イカ」。いったん溶けると品質が低下してしまうため停電の影響が心配されたが、全て無事だった。使用不能となった保管先の冷凍庫から、漁船の冷凍庫に移すことで難を逃れたという。不漁で水揚げが少なかった今季、漁師たちは執念で貴重なイカを守った。(経済部・若村俊)

 地震発生時、イカは石川県漁協小木支所の冷凍庫に保管されていた。しかし、停電で使えなくなり、4日になっても復旧の見通しは立たなかった。「溶けたら売り物にならんぞ」。焦りを募らせた漁師たちはイカを漁船に一時避難させることを決めた。

 5日、計2隻に2万ケース(計180トン)を移したが、ここからも大変だった。冷凍庫を使うには船のエンジンをかけ続けなければならず、乗組員は交代しながら24時間態勢で船番を担当。「漁師が命がけで取ってきたイカを何とか守りたい」(同支所の坂東博一参事)との思いで、過酷な作業に耐え抜いた。

 支所の電源はその後に復旧し、最低気温が氷点下となった11日、乗組員や技能実習生、地元ボランティアら総勢約30人が漁船「第86永宝丸」から支所の冷凍庫にイカを移した。12日は「第31永宝丸」のイカを運び出す予定という。

 小木のイカ漁は今季、漁船10隻が不漁などを理由に2月末までの漁期を残して操業を打ち切った。水揚げ量は802トンで、記録が残る1971(昭和46)年度以降で最少だった。

 昨年、漁師デビューした実習生アディララ・ケスマさん(30)=インドネシア出身=は「イカがだめにならず本当に良かった」と胸をなで下ろした。

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