広島・因島出身ベストセラー作家 湊かなえさんのメッセージ “どこにいても輝ける” ふるさとへの思い 代表作「告白」「母性」 新作は…

こちら、尾道市因島出身の人気作家、湊かなえさんです。12日から始まる「尾道映画祭」でトークショーを行います。去年、準備で訪れた湊さんにお話を伺いました。湊さんは“どこに住んでいても輝いてほしい”とふるさと・広島の人たちにエールを送りました。

去年11月。福山市のコーヒー専門店ー。
訪れたのは因島出身のベストセラー作家、湊かなえさんです。

小説家 湊かなえさん(広島・尾道市因島出身)
「お願いします。ありがとうございます」

淡路島で暮らす湊さん。この日はコーヒーの“試飲”をするため、日帰りでやってきました。

「尾道映画祭」では湊さん原作の映画「母性」が上映されます。これを記念して、地元の書店が「母性」の作品イメージに合うブレンドコーヒーの販売を企画しました。珈琲好きを公言する湊さん。専門店のアドバイスを受けて豆の種類や風味を決めるのは湊さん本人です。

炭火珈房ピトン 高田 護さん
「濃さと酸味とのバランスを決めていただけたら」
湊かなえさん
「インドネシアに9月に行ってきたんですが、ひょいと入ったお店のコーヒーがどれもおいしくて。土の香り、土を感じるコーヒーが大好きで」

〈山猫珈琲〉湊かなえ著
「外出すると、早く家に帰ってコーヒーを飲みたい、と思う。お客様に、コーヒーだけは自信を持ってお出しできる。家で飲むコーヒーが一番おいしい、なんてものすごく幸せなことだ」

試飲を繰り返し、豆の配合や焙煎度合いを選んでいきます。2023年9月にブックフェアで訪れたというインドネシアのコーヒー豆を使うことにしました。

湊かなえさん
ーーコーヒー好きのきっかけ
「デビューと同じ時期に近所のスーパーで年末福引をやっていて、エスプレッソマシンが当たって、ああ珈琲ってこんなに奥が深いのかと。コーヒーがないと1日が始まらないし1時間書いたら1杯飲む」

湊さんは高校卒業まで因島で育ち、いまは、兵庫県の淡路島で作家活動を続けています。子どものころから江戸川乱歩などの推理小説が大好きだったといいます。20代のときには青年海外協力隊に参加して、トンガに赴任した経験もあります。作家を目指したのは、結婚して長女が生まれてからでした。

湊かなえさん
ーー淡路島で書くということ
「当時、淡路島に住んでいたので、脚本を書いて東京のテレビ局に授賞式に行ったときに、地方に住んでると脚本家になるのはちょっと厳しいですねって言われて。やっぱりみんなで作るものなので、直しが入ったら1時間以内に来れる方が新人のうちは重宝されますって言われて。この時代にまだ東京に住んでいないと難しい仕事があるのかということにもショックを受けたし、何か悔しい思いがあったので」

小説なら淡路島でも書けるー。湊さんは2008年、35歳のとき「告白」で作家デビューします。女性教師の衝撃的な“告白”から始まるこの作品は大ヒットし、一気に日本を代表するベストセラー作家となります。

売れっ子になっても気さくで飾らない素顔はそのまま。「どこにいても輝ける」と、ふるさとにエールを送ります。

湊かなえさん
ーーどこにいても輝ける
「因島を出たいなっていう気持ちはありましたが、でも実際大人になって因島ではない所に住んでみたり、小説家になってずっと15年間、淡路島を拠点に活動していると、どこからでも発信はできるし、どこからでも受け取れることはできるし、どこに住んでいても一緒だなと思います。田舎だろうが都会だろうが海辺だろうが山奥だろうが、自分がいるところがアンテナ、発信の場所って思うといい」

〈映画「母性」〉湊かなえ原作
「私は娘を強く抱きしめて言ったのです。“愛してる”…」

娘を愛せない母親と愛情を求め続ける娘のすれ違いを描いた小説「母性」は2022年、映画になりました。尾道映画祭では「母性」を上映したあと、湊さんも登場し、監督とトークショーを行います。

湊かなえさん
ーー作品の映画化について
「映画『母性』は、いままで持っていた戸田さんや永野さんのイメージとは違う、何か抱えたものがある人の表情を見せてもらえるので、本当に息をするのも忘れたというような作品になっています。映画を見て本を読んでみたいなと思ってくれる方とか、本の入口はいろんなところにあるといいと思っているので、映像化はすごくうれしいことだと思っています」

サイン会で全国を回ることで、ファンに力をもらうという湊さん。「告白」でのデビューから駆け抜けた15年。2022年は1年間、休業して充電期間を過ごし、2023年12月、新作「人間標本」を発表しました。

「読み終わるとイヤな気分になるミステリー」と評されることもある湊作品ですが、あえて“イヤミスの女王”を全面に打ち出しました。

湊かなえさん
ーー新作「人間標本」について
「『ああ、またあの人がこんな嫌な話出してきた』って思われても、まあいいかなっていう感じです。今回蝶がモチーフになってるんです。美少年を蝶に見立てて1人ずつ標本にしていくという話。「告白」を書いたときも読者を誰も意識せずに好きなように書いたんですが、そういう突き抜けたのが読みたいんだよっていう人たちに『お待たせしました。1年休みましたし、さらにパワーアップして戻って参りました。次の10年もよろしくね』っていう作品です」

最後に、若者たちにこんなメッセージを送りました。

湊かなえさん
ーー若者へ『本を読んで』
「やっぱり本を読んで欲しいなっていう思いはありまして。大人になって何か立ち止まったときに、昔読んでいた本の一節が助けてくれることはたくさんある。言葉を知っている人は強いんじゃないかなと思って。読んでいた本が大人になったら役に立つかもしれない。いっぱい読んでもらえてたらいいなと思います」

湊さんが監修したコーヒー「『母性』ブレンド」も完成しました。ふるさとの映画祭を、湊さんは心待ちにしています。

尾道映画祭は12・13・14日。湊さんは最終日の14日に映画「母性」の廣木隆一監督とトークショーを行います。
「湊かなえ『母性』コーヒー」は会場で販売。その後は尾道の書店「啓文社」店舗・オンラインストアで購入可能です。

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