【早出し】温暖化の影響、解明急ぐ 異変-生態系クライシス~南極から~「鳥の巣湾」ペンギン調査

ペンギンの生態を調べる第65次隊の調査チーム=9日、スカルブスネス・鳥の巣湾

 【南極大陸=報道部・小田信博】南極を象徴する生き物であるペンギン。環境変化の影響を受けやすいとされ、南極西側では個体数の減少が指摘されている。昭和基地周辺はどうなのか。大陸沿岸部・スカルブスネスの「鳥の巣湾」を8~10日の日程で再訪し、調査チームの取り組みを取材した。

 鳥の巣湾のルッカリー(集団営巣地)を案内してくれたのは、第65次観測隊員として現地で調査を行う国分亙彦(のぶを)さん(44)。昨年12月26日の広報フライト以来の再会となった。

 国分さんによると、約20年間で鳥の巣湾周辺のアデリーペンギンは増加傾向にあるという。これまでの調査研究で、昭和基地周辺のアデリーは海氷が少ない方が繁殖しやすいことが分かっている。海に潜りやすくなり、海中の日光量の増加で餌となるオキアミが増えるためだとされる。温暖化で海氷は減少傾向にあり、鳥の巣湾など氷が厚い地域では今後、繁殖が進むと考えられている。

 一方、急激に気温が上昇する西南極では、個体数の減少が続く。海氷上で繁殖するコウテイペンギンの場合、海氷が少ないために南極半島周辺の複数のルッカリーで繁殖が進まなかった可能性が高い-との研究報告が出されている。

 南極の温暖化は、短期間ではペンギンにとって都合の良い部分があるかもしれない。だが、長い目で見ると、海洋環境の変化を引き起こし、餌不足で種の絶滅を招く恐れがある。実際、温暖化などで、今世紀末までに個体数が半分以下になるとの指摘もある。

 国分さんは「温暖化がペンギンにどのような影響を及ぼすか、まだ分かっていない」と説明。「生態が解明できれば、変化を予測することができる。過去のデータを積み重ねることが未来を読むことにつながる」と力を込めた。

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