【全国女子駅伝】京都市中京区で島根チームが伝統の「ごみ拾い」 練習前に励行 選手ら「気づきは走りに生きる」

ごみを拾う選手たち(京都市中京区・三条名店街)

 14日に京都市で開催される皇后杯第42回全国都道府県対抗女子駅伝に出場する島根チームが13日早朝、中京区の三条名店街周辺で、ポイ捨てされた吸い殻やペットボトルなどを拾った。

 全日本大学女子駅伝で佛教大を2連覇に導くなど、京都陸上界の名伯楽として知られた故森川賢一さんの下で学んだ選手が十数年前に始めて以来、チームの伝統になっているという。選手たちは、舞台となる京都の地に感謝を示しつつ、快走を誓う。

 25年にわたってチームに関わる多久和政徳監督(47、出雲市消防本部)によると、地元選手2人が佛大に進学。佛大ではごみ拾いが励行されており、2人はチームに参加した際も練習前などにごみ拾いを率先して行った。周囲も2人にならって拾うようになったという。

 多久和さんは「京都への感謝の思いを示すという意味があるだけではない。陸上では、走る前の準備や気づきが大切。ごみ拾いを通じて、常に考え、気を配ることが走りにもつながる」と効用を説く。

 この日は、21歳を最年長とする選手たち14人が夜も明けきらない午前6時、鴨川に近い中京区の宿舎を歩いて出発。アーケードと街灯があるため、雨天や早朝でも走りやすい近くの三条名店街へ移動する道すがら、「あった」「めっちゃ落ちとる」などと言いながら、ペットボトルやビン、吸い殻、弁当殻などを次々にビニール袋に入れた。

 練習では同名店街周辺を20~30分ほど軽く走って汗を流した。チームをけん引する加藤美咲さん(21歳、ダイソー)は「ごみを拾うのは、ちょっとした変化に気づくきっかけになり、レースにつながる」と意義を口にした。双子の小雪さん(同)は「前回大会(45位)は悔しい結果だった」として雪辱を誓った。最年少の樋口絢心(あやこ)さん(14、益田中2年)は「通りがきれいになってよかった。もし走るなら、全国で戦う貴重な機会。やりきったと自信を持って言える粘り強い走りをしたい」と笑顔を見せた。

 島根勢は第30回大会の23位が最高で、一時は最下位や40位台が続いた。県の人口は65万人を割り込み、全国で2番目に少なく、練習環境は都市部に比べると劣る。過疎化で指導者層の高齢化も進む。一方、郷里出身者でつくる県人会は、寄付などを通じて熱心に支えてくれているという。多久和さんは「本当にありがたい。これまでチームは実業団選手がほとんどいない中で戦ってきた。今回は加藤姉妹がおり、30位台に入りたい」と誓った。

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