〈1.1大震災〉涙の父「宝物奪われた」 珠洲土砂崩れ妻子4人犠牲

長男泰介君の誕生日を祝った昨年3月に撮影した家族写真。(右から)次男湊介ちゃんを抱く大間さん、泰介君、長女優香さん、妻はる香さん(大間さん提供)

  ●金沢で通夜

 祭壇に並んだ4人の遺影。在りし日の笑顔が参列者の涙を誘う。妻と子ども3人は、帰省先の珠洲市仁江(にえ)町で能登半島地震による土砂崩れの犠牲になった。13日、家族でただ一人生き残った大間(おおま)圭介さん(42)=金沢市野田2丁目=は気丈に喪主を務めた。「私の宝物がたくさん奪われてしまいました。妻と一緒にいたかった。子どもの成長をずっと見守っていきたかった」。心に大きな穴が空いたまま、最愛の家族を見送った。

 大間さん一家は12月30日、金沢市の自宅から仁江町にある妻の実家に向かった。義理の父母と祖父母、妻の兄の家族3人も金沢市から加わり、総勢12人のにぎやかな正月を迎えていた。

 午後4時過ぎ、地震が襲った。子どもたちは居間でボードゲームをしていた。大間さんは最初の揺れの後、周囲の状況を確認するため外へ出たところ、2度目の揺れで裏山が崩れてきた。土砂は家に残った11人をのみ込んだ。

 日本海に面する集落は道路が寸断され、住民も一緒に救出作業に当たってくれた。その夜、がれきの中から妻の兄を救出。その手には生後間もない男の子がしっかり抱かれていて、2人とも無事だった。

 翌2日から消防隊員が来て捜索したが、無情にも時が過ぎていく。親戚が持ってきてくれた赤外線サーモグラフィーを居間と思われる方向に向け、わずかに温度が高い場所を見つけては「生きているかもしれない」と願った。

 だが、願いは届かなかった。自衛隊が到着した4日に妻はる香さん(38)と長女優香さん(11)、5日には長男泰介君(9)と次男湊介ちゃん(3)が遺体で見つかった。

 妻の父母は土砂に流されたとみられ、まだ安否は分かっていない。

 優香さんは「負けず嫌いの頑張り屋さん」。得意ではなかった運動も一生懸命だった。泰介君はお小遣いを貯金して、家族にプレゼントを買ってくれる思いやりがあった。昨年の誕生日はスエットをもらった。大間さんは「なんでこんな優しい子なんかな」。涙があふれた。

 大間さんは珠洲署の警備課長で、休みに金沢に戻る生活だった。金沢の家に帰ると、湊介ちゃんは走って抱きついてくれた。仮面ライダーが大好き。土砂から救出された時も、そばに変身グッズがあったという。

 はる香さんとは4月で結婚13年目。「子どもが巣立ったら、昔みたいに2人で一緒に旅行や買い物に行こうね」。愛妻の言葉を思い出し、また涙があふれた。

 13日、金沢市内で営まれた通夜。ロビーには笑顔いっぱいの「生きた証し」である家族アルバムが飾られた。あいさつに立った大間さんは「命ある限り、ずっと思い続けていきます。いつもお父さんのそばにいてください。短い間だったけど、かけがえのない時間を与えてくれて、本当にありがとう。永遠に僕の宝物です」とこぼれる涙を何度もぬぐった。

花に囲まれた4人の遺影。参列者はすすり泣き焼香を上げた=金沢市内

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