〈1.1大震災〉ふるさと輪島離れ、揺れる心 集団避難 まず生活、学習環境の確保

 輪島市からの集団避難は被災者の生活環境、学習環境の確保が目的だ。輪島の孤立地区は道路網が寸断された状態が続くが、市内の校舎は大半が避難所に使われており、学校再開のめどがたっていない。ただ、住民や生徒の保護者からはふるさとを離れることをためらう声も出ている。

 昨年12月1日時点で市内の中学生は401人で、10日までに全員の無事を確かめた。集団避難は教員も随行するが、受け入れは生徒のみ。そのため保護者の同意が必要で、市教委は11日から連絡用の通信アプリを活用してアンケートを実施し、12日までの回答を求めている。

 市内最多の328人が通う輪島中は避難所として約900人が身を寄せる。小川正教育長は11日の会見で、上下水道が復旧せず、校舎に亀裂が入るなど安全な学習環境が確保できないことを挙げ、集団避難を決断したと説明。「意向調査の集約が済んだ段階で出発させ、2カ月程度で戻れないかと考えている。残る生徒、小学生も学習機会を損なうことがないよう対応したい」と話した。

 集団避難に関し、孤立状態にある鵠巣(こうのす)地区の住民と、中学生の保護者からはさまざまな声が聞かれた。

 同地区の住民によると、小学校と公民館に約180人、自宅や車中泊で約100人が暮らしている。輪島市大野町の介護職、大森将一さん(36)は自らは残るつもりだが、祖父母に避難を促している。「離れがたい気持ちもよく分かるが、少しでも暖かいところで過ごしてほしい」と話した。

 中学生と小学生の子ども3人を小松市の親類宅に避難させている大野町の椿原隆さん(41)は「もう少しで道は通れるようになると思う。ここで辛抱したい」と自身は車中泊を続けるとした。

 中学生の避難では、1年生の息子がいる加川千春さん(47)は子どもたちを金沢の親類宅に移した。「食料や水も十分じゃない。子どもを生活させるには不安で、白山市に行けば勉強はできるし助かる」と同意書にサインしたという。

 2年生の双子の息子(14)を持つ山下章滋さん(59)は子どもだけでは体調面が不安なことから輪島にとどまらせるとし「両親も、私たち夫婦も、そばに子どもがいるから『頑張ろう』という気力が湧いてくる」と述べた。

© 株式会社北國新聞社