地上の機体、私が動かす 山新観光の毛利さん「トーイング資格取得」、山形空港で奮闘

「トーイング」の資格を取得した毛利蛍さん=東根市・山形空港

 山形空港(東根市)を離着陸する航空機の地上支援業務を担う山新観光航空部の毛利蛍(けい)さん(22)が、機体を大型車両で移動させる「トーイング」の資格を取得した。首都圏などの空港では地上支援業務を担う女性社員が徐々に増えているが、まだまだ男性が多い職場。「事故なく、離着陸させることが大事」と、空の安全を支える仕事に意欲的に取り組んでいる。

 山形空港でのトーイング業務は日本航空の社内資格を取得する必要がある。毛利さんは昨年8月下旬から約3週間、大分空港(大分県国東市)で航空機を正確に模したダミーシップを用いたシミュレーション、定期便運航終了後の深夜帯に実機を移動させる夜間訓練などを重ねた。山形空港に戻った後も先輩社員からの指導を受け、10月からは一人で車両を操作している。

 毛利さんは山形市内の高校を卒業後、空港で飛行機に関わる仕事を希望し、山新観光に入社。航空部で各種業務の経験を積んだ。同社は1979(昭和54)年から山形空港での地上支援業務「グランドハンドリング」をしており、現在は日本航空の業務委託に基づき、全ての航空機に対応している。

 グランドハンドリングは、航空機の誘導や荷物の積み降ろし、旅客の案内など多岐にわたる。到着から出発までの限られた時間の中で、迅速かつ正確な作業が求められる。毛利さんは「地上業務を幅広く経験したい」との思いから、トーイングには入社時から興味を持っており、上司の勧めもあって大分空港での訓練に参加した。

 基本的に航空機は後進ができないため、自走できる位置まで車両で押して移動させる必要がある。正確に操作しなければ、機体の損傷や搭乗客への影響などにもつながりかねない。毛利さんも車両の操作には、細心の注意を払っている。

 山新観光の庄司忠広取締役・航空部担当は「興味を持って仕事をしている。後に続く人たちにも良い影響があると期待している」と若手の成長を後押しする。「お客さんがトーイングを意識する機会は少ないと思うが、楽しい旅にしてほしいという気持ちで臨んでいる」と毛利さん。目的地へと無事に飛び立つ機体を見届けることが、活力になっている。

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