〈1.1大震災〉氷見の農業用水、被害甚大 50カ所確認も全容不明

地中に用水路が通る農道を調査する職員=氷見市堀田

  ●調査開始、復旧は把握後

 能登半島地震で震度5強を観測した氷見市で、農業用水が甚大な被害を受けている。市によると、少なくとも50カ所で破損や漏水を確認。ただ、被災農家がまだ把握していない被害も多数あるとみられ、全容はつかめない。地震発生から2週間が経過した15日、国や富山県の合同チームが市全域の調査を開始し、今月末をめどに全容把握して春からの稲作に向けた復旧につなげる考えだ。

 「今年の作付けができるか、農業者が本当に心配している。皆さんの力で復旧の道筋をつけてほしい」。15日、氷見市土地改良区で行われた被災状況調査チームの出発式で、林正之市長は協力を呼び掛けた。

 市によると、破損した用水路の数は15日時点で、国営が39カ所、県営が11カ所となる。このほか、農業用ため池でも6カ所で損壊が確認。水源が乏しい氷見では、稲作の影響が懸念される。

 調査チームは同日、県や農林水産省の職員ら計62人が2人1組で調査に出発した。同市堀田では、農道が地震で長さ約150メートルにわたり陥没。崩れた高さは最大で約60センチに達し、地中の用水路が破断しているとみられる状況を確認した。

 ただ、被害の件数は今後大幅に増える可能性がある。調査対象となる市内の用水路の延長は末端まで含めると千キロを超えているほか、農閑期のためまだ被害把握できていない農家が多いとみられる。加えて、用水路の大半が地中にあり、市土地改良区の江添良春理事長は「パイプラインは不可視部分ばかり。調査に入れば入るほどたくさんの場所が見つかるのでないか」との見方を示した。

 調査チームでは今後、市内の各地区に被害を聞き取りながら現地確認を進める。復旧は全容把握後になり、時期は未定だ。県高岡農林振興センターの担当者は「春先には代(しろ)かきも始まり、水が必要な時期が迫っている。早く復旧して稲作や秋の収穫につなげたい」と話した。

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