〈1.1大震災~連載ルポ〉ゆがむ町「もう住めん」 内灘も爪痕深く

液状化の被害を受け、傾いた家屋や道路=15日午後0時40分、内灘町西荒屋

  ●北部で液状化深刻 道路波打ち、家傾く

 砂地特有の液状化現象で壊滅的な被害を受けた内灘町北部。西荒屋、宮坂、室地区は道路が波打ち、至る所で地面から茶色く濁った泥水が噴き出し、住宅が大きく傾くなど無残な姿をさらけ出した。「町がゆがんだ。もう住めん」。かつては干拓前の河北潟に面していた地で長く暮らしてきた住民は不安を募らせる。金沢の近郊でも能登半島地震の爪痕は深い。(津幡総局・立野愛)

 津幡総局に赴任して1年半、取材でよく通る内灘の道路は一変した。1日の地震発生から3日目、ようやく安全を確保した上で被災現場に入ることができた。

 西荒屋小前の県道は隆起や陥没でガタガタとなり、車が横転しそうなほど。電柱や道路標識はなぎ倒され、アスファルトに亀裂が走り、駐車場のコンクリートがめくれ上がる光景に恐怖を感じた。

 西荒屋の八田清三さん(72)の自宅は、隆起の影響で玄関先の階段がなくなった。駐車場から車を出すこともできず、「家を建て替えようにも、この年ではどうにもならん。どうすればいいのか分からない」と途方に暮れる。

  ●損壊住宅1000棟以上

 地震発生から2週間がたち、被害の全容が見えてきた。町によると、損壊した住宅は西荒屋や宮坂、室地区を中心に千棟以上とみられ、町内3カ所の避難所で約130人が過ごしている。

 断水も続いており、自宅が損壊した中井史郎さん(60)は15日、「断水が解消されない限り、ここで暮らすのは厳しい」と声を落とした。実際、内灘南部や金沢市内のアパートを探す動きが広がっているという。

 坪内健一宮坂区長(75)は、県道などの復旧には相当の時間を要するとの見方を示し、「残っている住民で復興していくしかない。またみんなが戻ってこられるよう、町と連携して一日も早い復旧を目指したい」と力を込めた。西荒屋の黒田邦彦区長(71)は「みんなで頑張り、一歩一歩前に進みたい」と語った。

 変わり果てたのどかな土地。復旧の道のりは険しいが、住民の結束力に胸が熱くなった。

 

  ●水路近くの砂地、地盤緩く 金大・塚脇教授(日本応用地質学会中部支部顧問)

 日本応用地質学会中部支部の顧問を務める金大環日本海域環境研究センターの塚脇真二教授は、内灘町北部の西荒屋や宮坂、室地区が河北潟の水路近くに位置する砂地であるため地盤が緩く、液状化が甚大だったとの見方を示す。

 液状化は砂地で、緩い砂の層が地下水に満たされている場所で発生する現象であり、地震によって激しく揺れると砂粒が移動する。

 塚脇氏は地震発生後に現地調査し、西荒屋地区では地震の揺れに伴い県道周辺で最低でも1メートルほどずれ動いているのが確認できると指摘。「詳細な調査結果が出るのはこれからだが、予想以上にひどい状況だ」と話した。

 一方で、一度発生すると地盤が安定するとし「同じところで何度も液状化することはない」と述べた。

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