2023年の建設業倒産1,693件 増加率40%超は32年ぶり 物価高で疲弊するなか「2024年問題」も差し迫る

2023年(1-12月)の建設業の倒産件数は、1,693件(前年比41.7%増)で、2年連続で前年を上回った。また、2016年(1,605件)以来、7年ぶりに1,600件台に乗せた。
増加率が40%を超えるのは、1991年(55.4%増)以降では初めてで、増勢基調が鮮明になっている。

負債総額は1,843億1,000万円(前年比54.4%増)で、2年連続で前年を上回った。負債が1,800億円を上回ったのは、2015年(1,935億3,700万円)以来、8年ぶり。負債10億円以上の大型倒産が9件(前年10件)と前年を下回ったものの、負債5億円以上10億円未満が40件(同38件)、1億円以上5億円未満が358件(同254件)と各々増加し、負債総額を押し上げた。

2023年の「新型コロナウイルス」関連倒産は421件(前年比48.7%増)と、前年の約1.5倍に急増した。都心部や地方都市部の再開発工事や新型コロナの5類移行による経済活動の本格化に伴い、受注環境は民間工事を中心に回復基調にあるが、いまだコロナ禍の影響を払拭できない企業は少なくない。
さらに、コロナ禍で見送られた工事の消化で受注が一気に増えたため、資金需要の増加とともに、人手不足が一段と深刻化している。労務費や外注費の上昇なども含め、各種コストアップ要因が小・零細企業の経営を直撃し、2023年の「物価高」倒産は130件(前年48件)と前年の2.7倍に急増した。下請の割合が高く、価格転嫁の難しい設備工事業や職別工事業への影響は大きく、倒産増加へとつながった。

こうしたなか、2024年4月にゼロゼロ融資の民間返済がピークを迎えるのと同時に、罰則付きの時間外労働規制が適用される「2024年問題」が差し迫る。資金繰りが一段と厳しくなる企業が増えるとみられ、自助努力が限界に達し、経営が疲弊した企業を中心に倒産件数がさらに増加する懸念は大きい。また、倒産に至らなくても先行きの不透明感から事業継続を断念する休廃業や解散が増加する可能性も高まっている。


業種別 職別工事業が前年比51.6%増、設備工事業が同45.7%増で増加が際立つ

業種中分類別では、最多の総合工事業が680件(前年比31.7%増、構成比40.1%)だった。次いで、職別工事業634件(同51.6%増、同37.4%)、設備工事業379件(同45.7%増、同22.3%)だった。総合工事業が最多件数となるが、増加率をみると下請け色の強い職別工事業、設備工事業が高くなっている。
さらに細かく分類した小分類別では、建築工事業が254件(前年比30.2%増)で最多。次いで、土木工事業216件(同26.3%増)、管工事業163件(同34.7%増)、とび・土工・コンクリート工事業147件(同72.9%増)と続く。

原因別 受注不振(販売不振)が約7割

原因別では、最多の受注不振(販売不振)が1,185件(前年比47.3%増)で、全体の約7割(構成比69.9%)を占めた。次いで、「既往のシワ寄せ」283件(前年比34.1%増)、代表者の病気や死亡を含む「その他」57件(同14.0%増)だった。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は、1,480件(同44.1%増)で全体の約9割(構成比87.4%)を占めた。

形態別 消滅型倒産が9割超

形態別では、最多が破産1,581件(前年比41.1%増)。次いで、取引停止処分55件(同61.7%増)、民事再生法39件(同69.5%増)、特別清算16件(同14.2%増)と続く。
このうち、「消滅型」倒産は1,597件(同40.8%増)で、全体の9割超(構成比94.3%)を占めた。業績低迷から経営を立て直せず、消滅型を選択せざるを得ない実態が浮き彫りになっている。

資本金別 1千万円未満が7割

資本金別では、1千万円未満が1,244件(構成比73.4%、前年873件)で7割を占め、中小・零細企業の倒産が中心だった。内訳は、1百万円以上5百万円未満549件(前年比50.4%増)、個人企業他312件(同24.8%増)、5百万円以上1千万円未満289件(同45.9%増)、1百万円未満94件(同56.6%増)。
このほか、1千万円以上5千万円未満が436件(同43.8%増)、5千万円以上1億円未満が12件(同33.3%減)、1億円以上が1件(前年ゼロ)だった。

地区別 9地区のうち8地区で前年を上回る

地区別では、四国(28→27件)を除く8地区で前年を上回った。北海道(前年比200.0%増)を筆頭に8地区で2桁増を示し、全国的に倒産が増加した。なかでも、北海道は新幹線の延伸工事や先端半導体メーカーの進出など大型工事が目白押しながら、資材価格の高騰や人手確保に伴う労務費の上昇が足かせとなり、採算悪化から倒産するケースが見られた。

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