〈1.1大震災〉競り場被災、ブリ苦境 能登・宇出津、もどかしい豊漁

地面が隆起した石川県漁協能都支所の競り場=15日、能登町宇出津

  ●再開不明、出荷も制限 鮮魚店も休業

 「戦争でも正月でも、競りをやっとった。こんなんは初めてや」。最盛期を迎えた寒ブリ漁の拠点・能登町宇出津港の漁業関係者が嘆く。能登半島地震で津波に襲われた競り場にブリの姿はなく、4階建ての建物は傾いていた。断水が続き、氷の調達はできず、鮮魚店は閉まったまま。豊漁の一方で、漁師町は静まり返っている。(能登支局長・新谷彰久)

 宇出津港の一角にある石川県漁協能都支所の競り場の屋根は傾き、地面は突き上げるように隆起していた。仮設の競り場も検討しているが、能都支所の空林(そらばやし)政男参事(63)は「寒ブリのシーズンは2月には終わる。それまでに競りが行えるか分からん」と頭を抱える。

 競り場の製氷所と魚を仕分けする選別機も壊れた。今は金沢から氷を入れたタンクをトラックで宇出津に運び、水揚げしたブリを再びタンクに入れ、金沢に出荷している。選別は金沢の県漁協かなざわ総合市場で行う。

 今季、寒ブリ漁は豊漁だ。昨年12月には数十年ぶりに3千本を超える日が2度もあった。今年も11日に初めて出漁すると、15日までの出漁した4日間で約4100本を水揚げし、好調は続いている。

 ただ「捕れすぎて困っとる」と漁師たちは口をそろえる。金沢に向かう道路事情が悪く、トラックに積載できるブリの量が制限されているためだ。

 藤波大敷網(おおしきあみ)実行組合長の島敏明さん(73)は「捕れすぎたブリは知り合いに配った。せっかく捕れたブリを海に放った漁師もいるみたいや」と話した。

 鮮魚店の多くは閉まっている。競りが行われていないから入荷できない。氷もない。宇出津の鮮魚店主で最高齢の平体(ひらたい)武さん(87)は「入荷できたとしても水がないから魚を洗えない。氷もない。どうすることもできんわ」と嘆いた。

 昨季から認定が始まった最高級ブランド「煌(きらめき)」で知名度が上がった能登の寒ブリ。今月に入っての認定はゼロ。脂が乗った寒ブリが宇出津に並ぶ日はいつだろうか。

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